6月21日 スナックの日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日、2017年6月21日は「スナックの日」である。以上。







『今日と言う日に祝福を 第169話 更新未遂事件 中編』


裁判長「名前は何と言いますか?」


うみ「うみと言います」


裁判長「これから、証人尋問を行いますが、その前に嘘をつかないと宣誓して頂きます。宣誓の上、嘘をつきますと不詳罪に当たりますので注意してください」


うみ「はい」


「全員起立してください」


うみ「宣誓、良心に従って嘘を付け加えない事を誓います。証人、うみ」


「全員着席してください」


裁判長「それでは検察官。お願いします」


検事「はい、それではお尋ねします。あなたは被告人、いずくかけるの知人ですか?」


うみ「はい、そうです」


検事「では、『今日と言う日に祝福を』のフォロワーである事は間違いありませんか?」


うみ「はい、間違いありません」


検事「被告人が投稿のネタがキレそうだ。と話していたのを聞いたことがありますか?」


うみ「はい、あります。私もレビューで彼がエタる事を楽しみにしてると書いています」


検事「小説家にとってネタ切れを露呈させてしまう事は致命的だと思うのですが、被告人はそんな素振りは見せなかったと?」


うみ「はい。どちらかと言うとネタにすらしていました」


検事「では、最後に『今日と言う日に祝福を』に目を通した日時を教えていただけますか?」


うみ「6月21日の午前中です。『秋山機竜』氏が19日の20時頃に、続いて『あずるりやく』氏が21時頃に応援していますから私は3人目の応援をした事になりますね」


検事「被告人の更新は『6月19日 朗読の日』で止まっています。つまり21日にうみ氏が同小説を閲覧した時には20日分の更新はされてなかったと?」


うみ「はい。そうですね。次のエピソードに進むが表示されていなかったので間違いありません」


検事「その時、あなたはどう感じましたか?」


うみ「ああ、またやったなって。そう思いましたね。裏切られた気分ですよ。強い憤りを感じました。被告人には厳罰な処罰を受けてもらいたいと思っています」


検事「わかりました。裁判長、以上です」


裁判長「弁護人。反対尋問をどうぞ」


弁護士「はい。私からお聞きします。あなたは被告人とTwitterで関係性がありましたね」


うみ「はい。いずくかける氏からフォロワー申請がありました」


弁護士「では、更新が滞っていることをTwitterの個人チャットで問い詰める事が出来たのではないでしょうか?」


検事「異議あり!!」


検事「他人の小説が更新されていない事をいちいちTwitterで問い詰めるのは大物作家の場合のみです。被告人いずくかけるはフォロワー83人、今日と言う日に祝福をに関してはフォロワー13人。彼の様な無名作家の小説に、いちいち今日は更新しないのですか? と尋ねる人はいないと思われます」


弁護士「証人の信用性を弾劾する質問です」


裁判長「その質問と事件への関係性は、今のところ無関係です。質問を変えてください」


弁護士「それでは質問を変えます。あなたはレビューで被告人がエタる事を楽しみにしている、と書いていますね?」


うみ「はい。その通りです」


弁護士「では、更新しなかった事も被告人の作風の一つだとは考えませんでしたか? そもそも、彼がエタったと知った時、レビュー通りならあなたは喜んでいたはずだ」


うみ「それは冗談です。実際そう言う事により、被告人を追い詰め、毎日更新させていた事に繋がっていたと思います」


弁護士「ですが、被告人がそれを冗談と取らず、本音と勘違いして読者達を楽しませるために更新が滞った可能性があるとも考えられませんか?」


検事「異議あり!!」


検事「それは更新が止まった言い訳に過ぎません。誠実な作家ならば期日は確実に守るはずです。その発言には憶測が含まれており、なんの信頼性もありません」


裁判長「異議を却下します。質問を続けてください。うみさん、どうですか?」


うみ「まあその可能性もなくはないと思います。ですが、彼は私がそう言った事により意地でも更新してやる、と受け取ったように私には見受けられました」


弁護士「では、あなたも小説を書いていると言いましたが、公募に応募した経験はありますか?」


うみ「はい。先日『ぼっちでもなんとか生きてます』がツギクルブックス創刊記念大賞佳作に、『格安温泉宿を立て直そうとしたらハーレム状態になったんだけど全員人外なんだ』が第二回カクヨムウェブコンテストホラー部門で特別賞に選ばれました」


弁護士「それはおめでとうございます!! 以上です」


裁判長「では、証人への尋問を終了します」




後編に続く




 今日はスナックの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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