6月20日 ペパーミントの日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日、2017年6月20日は「ペパーミントの日」である。以上。







裁判長「開廷します」


『今日と言う日に祝福を 第169話 更新未遂事件 前編』


裁判長「では被告人は前に出て、証言台に立ってください」




裁判長「裁判員の方に向け発言してください。名前は何と言いますか?」


いずく「……いずくかけるです」(俯きながら)


裁判長「それでは、これより検察官が起訴状を朗読しますので、よく聞いてください。検察官、お願いします」


検事「はい。被告人は平成29年、6月20日。毎日更新を謳っている小説、今日と言う日に祝福を、を未更新のまま就寝。翌日21日、更にそれをそのまま放置、遺棄したまま外出。この行動は完全に読者を舐め切った行為であり、またやる気が感じられない。読んでくれている人間にこれからの更新について一抹の不安を抱かせる行為である。カクヨム国憲法第365条、罪状、罪名、更新未遂罪。読者失墜罪」


裁判長「被告人には黙秘権があります。言いたくない事は言わなくて結構です。ただし、口頭で述べましたことは有利、不利問わず証拠になりますので注意してください」


いずく「……はい」


裁判長「裁判員の方に向け発言してください。今、述べられた発言に間違いはありますか?」


いずく「更新しなかった事は事実です。ですが、書こうと言う気持ちはありました」


裁判長「弁護人の意見はどうですか?」


弁護人「被告人と同じです。彼には更新の意思がありました」


裁判長「では、被告人は席に戻ってください」


裁判長「それでは検察官。冒頭陳述をどうぞ」


検事「はい。被告人は今年の初め、元旦より『今日と言う日に祝福を』を投稿し始め、1月中は毎日午前0時更新していました。これはその日が始まる前に今日が何の日なのかを知らないと意味がないと被告人が語っており、この小説のコンセプトに沿った行動だと思われます。ですがいつしかその更新は0時から遅れをとり更新時間が不定期になり始めます。そして今年3月31日。遂に更新が間に合わずに更新未遂。初めての犯行でしたが、翌4月1日がエイプリルフールであった為、これをネタだと思わせる更新詐称罪を犯しました。被告人は少年時代、小学校中学校と非常に遅刻の多い生徒であった事から、元より自己管理の出来ない人間であることが伺え、また連載中の『犯罪者達の終焉曲』を更新するすると言いながらまったく更新しない様から、意識の低さが露呈しだしています」


裁判長「今の冒頭陳述に対し、弁護側は何か意見はありますか?」


弁護士「罪状については被告人の申した通りです。冒頭陳述の意思部分は虚偽です。詳しくは後で明らかにします」


裁判長「それでは検察官。立証をどうぞ」


検事「はい。ではまず、更新日時を見ていただきたいと思います。カクヨムではいつ、何時に小説を更新したかがはっきりと残る為、これを見ていただけたら被告人が更新しなかった事が明確になるのは言うまでもありません。次に、1月の小説と6月の小説を見比べて頂きたいと思います。明らかに1月はやる気に満ちているのに対し、6月になるとクオリティが落ちています。この事から、被告人のモチベーションが低下していると読み取れます。では最後に自白調書を読み上げたいと思います。私が毎日更新を謳っている『今日と言う日に祝福を』を更新せずに、ネタが思いつかず気付けば寝てしまっていた事は間違いありません。この様に、被告人本人の私印と署名がしてあります。以上です」


裁判長「検察官は、これ以外の立証はありますか?」


検事「被告人いずくかけるの知人であり、『今日と言う日に祝福を』のフォロワー。うみ氏に証人尋問を申請します」


裁判長「弁護人はどうしますか?」


弁護士「問題ありません」


裁判長「それでは、うみさんを証人として採用し、尋問を開始します。では、うみさんを入廷させてください」




 中編に続く




 今日はペパーミントの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る