6月16日 和菓子の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日、2017年6月16日は「和菓子の日」である。


 和菓子の日は848年の平安時代。菓子類を神前に供え疫病退散を祈ったという「嘉祥菓子」が由来となって制定された一日である。

 嘉祥菓子は、室町時代から明治時代にかけての文化であったが、16種類の菓子を食べると言う目的から、途中で1と6を足した7種類のお菓子に変更されている。やはり16種類と言うのは多すぎたのだろう。


 京都なら八つ橋。私の大好物である三重県伊勢の名物である赤福。饅頭、ようかん、どら焼き、団子と和菓子も様々であるが、やはり和菓子を語る上で欠かせないのは餡子だろう。

 スイカが野菜であるのと同じく、餡子の原料も果物ではない。諸君らもご存じの通り豆である。甘味物を作るというのに果物を使わないのは世界的に見ても異例である。ただの豆があれほど芳醇な甘みをもって楽しめると言うのだから、先祖の飽くなき食への探求心にただただ脱帽するばかりである。


 今日はそんな和菓子の日ではあるが、肝心の日本人への知名度が低いのが気になるところである。多くの人間は今日初めてこの記念日を知ったのではないだろうか。

 もし和菓子の日が、バレンタインデーの様に気になる異性に和菓子を送る日であったならば、和菓子業界にとって繁忙期になっていたに違いない。だが、そうしなかった事に日本人の慎ましさを感じる一日である。




 今日は和菓子の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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