6月4日 虫の日
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
諸君らは地球上にどれだけの種類の虫が生息しているかご存じだろうか。実はこの数を正確に知る者はいない。未確認の個体や、新種を含めなかったとしても、人間が確認し名前を付けた虫に限った話だったとしても、その数があまりに膨大である為、数えようとした者がいないのである。では、推測の話になるが、地球上全ての虫が一体何種類いるかという予想では、学者の間で、500万から3000万種。またある者は8000万種はいると主張しており、要するにまったく解明できていないのである。本日、2017年6月4日は『虫の日』である。
虫の日は「カブトムシ自然王国」を宣言している福島県田村市の田村市常葉振興公社が64《むし》の語呂合わせの元に制定した一日である。
カブトムシ自然王国とは福島県常葉町の町おこしの一環である。全国有数の葉たばこの産地である常葉町は、葉たばこの肥料となる腐葉土にカブトムシが卵を産み、幼虫を大量に捕らえられる事に着目した。1988年6月4日に「カブトムシ自然王国」として独立し、観光施設の建設に力を入れる。今現在は田村市として生まれ変わり、毎年多くの子供達を楽しませている。
ところで、今更だが諸君らは虫は好きだろうか? 実を言うと私は大の苦手である。それを恥とは思わないし、私と同じく苦手な人の方が過半数を占めるだろう。だが、その話は大人に限る。
子供は問答無用で虫が好きだ。私も例外ではない。少年時代は虫が好きだった。ではなぜ人は大人になるにつれて虫が苦手になってしまうのだろうか。
子供と言うのは好奇心旺盛な生き物である。それだから怖さ、気持ち悪さよりも虫に興味が湧いて仕方がないのだろう。ましてや、虫が汚いと言うイメージや、毒を持っている可能性があるなんて知りもしないのだから尚更だ。
私は子供の頃はゴキブリさえも平気で捕まえることが出来た。だが今は、目が合っただけで動けなくなってしまう程に苦手である。これが人間の本能かと言えば実はそうではなく、ゴキブリが生息しない北海道の人に実物を見せると、驚きはするがそこまでの嫌悪感を抱かないと言うデータも出ている。
つまり、周りから与えられた汚い、危ない、怖いと言ったイメージが、私の中では強く深く刷り込まれてしまっているのである。
これは言わば思い込みなわけであり、強い意志を持って自分を克服しようとすれば、子供時代の様にまたゴキブリを素手で捕まえられるようになるのかもしれない。
ちなみに、日本では今現在3万種程度の虫の生息が確認されており、予想では後7万種の新種の虫がいるとされている。これが意味する事は、もしかしたらゴキブリ以上におぞましい虫が我々の近くに潜んでいるかもしれないという事だ。
今日は虫の日、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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