6月2日 裏切りの日
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
今現在時刻は22:14。つまり、今日6月2日が終わるまですでに二時間を切っている事になる。一日一話更新を心がけているこの小説を、残されたその時間内に書き上げなければならないわけだが、ではなぜここまで書き始めを遅らせたのかと言えばそれにはある理由がある。
実は今日、私は休みで、さらに言えば朝の9時には起床しており、特に用事があったわけでもなく、書こうと思えばいつでも書けた。ならばその時間に何をしていたかと言うと、今カクヨムで行っている「僕とキミの15センチ」短編小説コンテスト用の短編小説を書き連ねていたのである。
『15cmの不可侵領域(パーフェクトガード)』と言う題名で投稿してある。よかったら読んでやって欲しい。応援してくれた上原 友里さん、戸松ハルヨシさん。ありがとうございます!! とまあ、ここまでがいつも通りのステマである。
私が今日の分を更新していない事に気付き、「ああ、こいつ、今日も間に合わないんだろうな」と期待していた諸君。残念ながらこうして私はリミットまでに書き終え諸君らの想像を裏切る結果となった。本日、2017年6月2日は『裏切りの日』である。
裏切り。例えばマラソン大会で「一緒に走ろう」と誓った仲間が全力疾走で自分を置き去りにするような行為の事を指すが、その程度なら笑い話で済むだろう。
本日が裏切りの日と言われるようになった所以は、1582年に織田信長が仲間であったはずの明智光秀に裏切られ自害した、本能寺の変にある。
本能寺の変とは、京都本能寺に宿泊していた織田信長が中国にいた羽柴秀吉の援軍に向かったと見せかけた家臣、明智光秀に謀反を起こされた、戦国時代における最後の下剋上とも呼べる襲撃事件である。
この襲撃で織田信長を下し、天下人となった明智光秀であったが、それから13日後には山崎の戦いにて羽柴秀吉に敗れ信長の後を追う事になる。故に、最後の最後まで明智光秀が織田信長を襲った理由がわからずじまいであった。
この世に人の心が読める人間などいない。表面上の笑顔の裏では、どれだけ黒い事を考えているかわかったものではない。
本能寺にいる自分を攻めてきた人物が、近しい存在の明智光秀であった事を知った時、織田信長は「是非に及ばず」という有名な言葉を残した。
是、良しとする事。非、あらざるとする事。それらを決定づける必要がない。つまりは議論をしたところで結果は変わらない。自分が死ぬことには変わりなく、「しかたがない」と言う意味で認識している諸君らが多いだろう。
だが私には、この台詞からは明智光秀の襲撃は、彼の本心であり、いままで見せていた表面上の姿と違っただけの事。つまりは良いも悪いもなく、ただ明智光秀がそう言った人物であっただけの事だと言っているように思えるのだ。
世の中綺麗事や理想だけでは成り立たない部分もある。長い人生の中、やむをなく裏切る事も、また裏切られる事もあるだろう。だがそんな時には、「なぜ裏切った!」や、「おまえを信じていたのに!」ではなく、信長と同じ様にそれが人間の心理であると堂々と言える人間になりたいものだ。
今日は裏切りの日、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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