　やあやあ諸君。

　私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。

　諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

　私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。

　諸君、私はゲームが大好きだ。子供の頃にファミコンを触り、以来ゲームの虜である。思えば、私が初めてゲームをしたのは、テレビゲームと言う存在が出来て間もない頃であり、そんな初期の頃から今日に至るまで、青春と共にゲームの歴史を体験できたのは幸福だったのかもしれない。そして、私が子供の頃にプレイしていたゲームが、更に進化を遂げ、脈々と受け継がれた続編を今の子供たちが遊んでいるのをみると感慨深い気持ちにもなってくる。本日、2017年5月27日は『ドラゴンクエスト』の発売日であるが、同時に『ときめきメモリアル』の発売日である。

　諸君らの言いたい事はわかる。国民的人気を誇る『ドラゴンクエスト』。取り上げるなら断然こっちの方だと。だがしかし……。だがしかしだ！　私の様に寂しい青春を送ってきたものにとって美少女ゲームと言うのは、たとえ仮想とは言え女性とお付き合いをした青春、恋愛の思い出なのである。勇者になり世界を救う。それもロマンだろう。しかし！　それよりも！　理想の女性と仲良くなり恋愛をする。私にはこちらのほうが夢のある話なのである。

　『ときめきメモリアル』は1994年にコナミから発売された恋愛シミュレーションゲームである。当時の家庭用ゲームには「恋愛シミュレーションゲーム」や「恋愛ゲーム」がまるで定着していなかったため、この作品のヒットによりこれらジャンルが確立されていった。今でこそ、それこそスマホですら配信されるようになったが、この作品のヒットがなければ美少女ゲームと言うのは世に広まっていなかったかもしれない。まさに恋愛シュミレーションゲームの元祖と呼べる作品である。

　本作の目的をざっくりと紹介すると、とある高校に通う主人公が、同高校にある伝説の木の噂を耳にする。噂とは、卒業式の日にその木の下で女性から告白されれば永遠の幸せが約束されると言う話だ。早速主人公は意中の女性に行動を起こし、卒業式にここで告白される事を目指す。

　メインヒロインは『藤崎詩織』と言う女性であり、今見るとやはり時代を感じるグラフィックであるが、当時彼女に恋した男性諸君の数は数えきれないだろう。だが、メインヒロインでありながら攻略がとても難しく、攻略が容易になるセーブデータが入ったメモリーカードが発売され、それが元で裁判にまで発展している。

　恋愛シュミレーションゲームをやった事がない諸君。私は断言できる。諸君らは人生を損している。偏見を持たないでほしい。騙されたと思って一度はやってみて欲しい。諸君らが徹夜で攻略してしまう程、魅力的なヒロインに出会える事を私は願っている。

　今日は『ときめきメモリアル』の発売日、特別な一日である。

　我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。