5月24日 ミレニアム懸賞問題

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 研究、ひらめき、そして努力。人類は今までこの世の謎を数えきれないほどそれらで明らかにしてきた。だがしかし、今を持ってなお解明されていない出来事はあまりに多い。これらを解明すべく、世界には真理に辿り着ければ100万ドルと言う多額の懸賞金が出る程の問題がある。本日、2017年5月24日は『ミレニアム懸賞問題』が発表された日である。


 ミレニアム懸賞問題とは、2000年のこの日にアメリカのクレイ数学研究所が発表した7つの問題である。これらを解決する事により100万ドルの懸賞金が寄与され、発表から17年経った今、解明されたのはその内の1つだけであり、未だに6つの謎が残されている。


 もしかしたら諸君らの中にこれらを解明できるものがいるかもしれない。というわけで、7つの問題を紹介しようと思う。(wikipediaより)


・ヤン–ミルズ方程式と質量ギャップ問題

 任意のコンパクトな単純ゲージ群 G に対して、非自明な量子ヤン・ミルズ理論が 'R4 上に存在し、質量ギャップ Δ > 0 を持つことを証明せよ。


・リーマン予想

 リーマンゼータ関数 ζ(s) の非自明な零点 s は全て、実部が 1/2 の直線上に存在する。


・P≠NP予想

 計算複雑性理論(計算量理論)におけるクラスPとクラスNPが等しくない。


・ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさ

 3次元空間と(1次元の)時間の中で、初期速度を与えると、ナビエ–ストークス方程式の解となる速度ベクトル場と圧力のスカラー場が存在して、双方とも滑らかで大域的に定義されるか。


・ホッジ予想

 複素解析多様体のあるホモロジー類は、代数的なド・ラームコホモロジー類であろう、つまり、部分多様体のホモロジー類のポアンカレ双対の和として表されるようなド・ラームコホモロジー類であろう。


・ポアンカレ予想

 単連結な3次元閉多様体は3次元球面 S3 に同相である。


 どうだろう。諸君らにはこの問題、解くことができそうであろうか。私には何が書いてあるのかさっぱり理解が出来ない。電波的な怪文にしか見えない。だがしかし、私がこれを理解せずとも一生において何一つ困る事はないだろう。


 最後に紹介されたボアンカレ予想を解いたのはロシアの数学者、グリゴリー・ペレルマンである。彼は16歳、当時の最年少記録を更新し国際数学オリンピックに出場し、満点で個人金メダルを獲得したが、友人からは国際物理オリンピックに出場していればそちらでも満点で優勝しただろうと言われる程の天才である。


 ミレニアム懸賞問題を解いた彼は、その功績から2006年に「数学界のノーベル賞」と言われているフィールズ賞を受賞する。だが、「自分の証明が正しければ賞は必要ない」と、受賞を辞退する。また、「自分が有名でなければ、数学界の不誠実さについて不満を述べるという醜いことをせずに、黙ってペットのように扱われておくことができるが、有名になると何かを言わなければならなくなる」と語り、ミレニアム懸賞問題の賞金と賞品の授与式にも表れず、これらは数学界に寄付される形となった。


 天才の考える事は凡人には理解しかねるが、まるで漫画や映画の主人公の様だ。あまりにかっこよすぎる。

 ミレニアム懸賞問題は元は7つで、今現在は6つになっている。ならばなぜ、グリゴリー・ペレルマンは100万ドルの賞金を受け取らなかったのか。今度はそれを新たなミレニアム懸賞問題として追加してみてはどうだろうか。




 今日はミレニアム懸賞問題が発表された日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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