5月14日 出産の最年少記録
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
子供を産み、そして育てる事が人生の目標、終着点であると考える人は多い。確かに、一生命として祖先から受け継いできたDNAを子々孫々にまで繋いでいくと言うのは人間のみならず、自然の摂理を考えれば当然の営みと言える。だが子供どころかパートナーさえ見つからない私は一体どうすればよいのか。世の中にはその出産を僅か5歳で体験した女性がいると言うのに。2017年5月14日は『出産の最年少記録』が生まれた日である。
出産の最年少世界記録を更新したのは、ペルーのリナ・メディナという女性である。彼女は5歳7カ月と言う異例の早さで1939年に男児を出産している。5歳になった頃腹が膨らみだし、腫瘍だと思った両親が病院に連れて行ったところ妊娠している事が発覚。帝王切開での出産であった。
問題はその年齢もさることながら父親は誰であったのかと言うところである。一時は彼女の父親に疑いがかけられ投獄されるも、証拠不十分により直ぐに釈放されている。胎児内胎児と言う、双子の様に生まれた子供にすでに子供がいる極めて珍しい事例も疑われたが、リナ本人にも自覚は無く、結局父親はわからずじまいであった。
日本でも未成年者の妊娠と言うのは珍しい話ではないが、江戸時代まで遡れば、女性は15~17歳辺りでの出産が平均的であった。平均寿命が今よりは短かったことと、義務教育と言った制度が無かった時代であれば当然なのかもしれないが、今からは想像するのも難しい話だ。
地球上で最も寿命の短い生物をご存じだろうか。それは日本にも生息する『カゲロウ』と呼ばれる昆虫である。成虫になってからの彼らの余命は約24時間。口が退化しているため餌を食すこともできない。ではなぜ彼らは成虫になるのか。それは子孫を残す為である。限られた時間の中、彼らは次の世代に命を繋いで死んでいく。儚くもしっかりとした生命の神秘がそこにある。
対して私はどうだ。生まれ落ちて早くも30年が経とうとしている。だが、子供を残すどころか相手も見つからない。あまつさえ、それをネタにして小説を書いている始末である。そろそろ良い時分だ。私もカゲロウの様に必死になってみようと思う。
今日は出産の最年少記録、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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