5月13日 メイストームデー

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 元旦には着物姿でいちゃつくカップルを眺め、バレンタインデーには自分で買ったチョコレートをかじり、ホワイトデーには自分には関係ないと頭の中を真っ白にしていた諸君。と言うより私だ。よく耐えた。感動した。今日は諸君らの日である。人生いい事ばかりではない。だが逆を返せば悪い事ばかりでもない。雨が降って虹が出る。戦争の後には花が咲く。人の死の後には新たな生命の誕生がある。2017年5月13日は『メイストームデー』である。


 メイストームデーとは、「八十八夜の別れ霜」。つまりは、立春から88日後には霜が立たなくなる、男性の一物すら立たなくなる? ことから、バレンタインデーの88日後に制定されたまたはである。


 元旦、バレンタイン、ホワイトデー。散々いちゃついた、ただれた生活を送ってきた諸君らに今一度問いたい。その愛は真実まことであるのか。ただ顔がかわいいから付き合っているのではないのか。抱き心地が良いから付き合っているのではないのか。ただただ惰性で付き合っているのではないのか。今一度良く考えてみて欲しい。


 それでも自分の愛こそ真実だ。一生涯貫く自信がある。例え相方が目の前で脱糞しようが他の異性に抱かれようが、スナック菓子を豪食し体重が100㎏を超えようともこの愛は変わらないと言えるのであれば、私はもう何も言うまい。


 だが、そうではない。そうとは言い切れない諸君らは、このメイストームデーに別れ話を切り出す権利がある。これはチャンスだ。日本ではあまり浸透していない文化であるが、実はこの記念日の発祥は日本である。日本人がこの日を利用しない手はない。さあ! 今こそ勇気を出せ! 立ち上がれ! お前の後ろには私が付いている!(私は一切の責任を負いません)




 今日はメイストームデー、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。






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 宛先

『今日と言う日に祝福を 2回続けて同じ落ちを使うな係』まで

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