4月26日 リメンバー・チェルノブイリ・デー

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 福島第一原子力発電所以来、日本でも原子力発電所の危険性が注目を集めた。一歩間違えれば人類が絶滅するほど、取り返しの付かない事態に陥るオーバーテクノロジー。歴史の中では様々な事故が起きてきた。その中でも、事故の深刻度を示す国際原子力事象評価尺度にて、最悪のレベル7に分類されたチェルノブイリ原子力発電所事故。本日、2017年4月26日は『リメンバー・チェルノブイリ・デー』である。


 チェルノブイリ原子力発電所事故は1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故である。チェルノブイリ原発はウクライナのチェルノブイリ近郊、プリピャチ市に建造されており、事故から30年経った今も、周辺の森はレッドフォレストと呼ばれ、避難民は戻っていない。


 この事故の原因は、事故当時に行われていたある実験にある。作業員に原子炉の仕組みをちゃんと教育しておらず、その中で行われたタービン発電機の慣性回転でどれだけの電力が得られるかと言う実験。結果として原子炉建屋を吹き飛ばし、世界中に放射能をまき散らす事となる。


 原発事故の恐ろしい点は、その事故が未来永劫続いてしまうと言った点にある。溶け落ちた燃料デブリは原子炉建屋の底で固まり、その見た目から『象の足』と呼ばれているが、事故から30年経った今なお、放射性物質を排出し続けている。これに対し人類が出来る事は、なるべく放射能を外に出さない為に周りを『石棺』と呼ばれるコンクリートの建造物で覆う事だけであった。2017年現在は、その石棺が老朽化し、さらにその周りを覆うアーチ型のシェルターが建造された。


 チェルノブイリ原発周辺は、皮肉にも30年間人間が簡単に立ち寄れなくなった為、キツネやオオカミなどの野生動物の楽園と化している。廃墟と化した街、プリピャチ。プロの写真家達が納めた人のいない世界はどれを見ても美しい。

 福島もそうだが、このまま原発事故を繰り返せばやがて人間の住める環境は無くなっていく。だが、野生生物にとって、放射能より悪影響をもたらす人間が減るのは喜ばしい事なのかもしれない。




 今日はリメンバー・チェルノブイリ・デー、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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