3月16日 万年通宝、太平元宝、開基勝宝が鋳造された日
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
我々の生活に欠かせない物。その一つがお金である。普段何気なく手にしているそのお金には、偽造を防止する為ありとあらゆる技術が施されている事はあまりにも有名である。その甲斐あって、最近では偽札事件を聞かなくなったが、技術が確立されるまでは、政府にとって偽造は悩みの種だった。本日、2017年3月16日は『万年通宝、太平元宝、開基勝宝が鋳造された日』である。
万年通宝、太平元宝、開基勝宝とは、日本で最初の流通貨幣と言われる和同開珎が偽造され、それらが出回ったことにより、760年、50年間流通していた和同開珎に代わり発行された貨幣である。
わかりやすく言うと1円玉、10円玉、100円玉と捉えて貰っていい。一見便利になったように思えるが、万年通宝一枚の価値は和同開珎10枚分であり、それが貨幣流通を混乱させ、僅か5年足らずで鍛造が中止された不遇の貨幣である。
近年でも、二千円札が発行された後、直ぐにその姿を見なくなったところを見ると、新たな貨幣を流通させることがいかに難しいかが見て取れる。
貨幣の偽造と聞くと、ルパン三世、カリオストロの城のゴート札を思い浮かべる諸君が多いのではないだろうか。あんな風に地下に作られた印刷施設の中、世界中の紙幣を自由に複製できたならば、城に住むことも夢ではないだろう。世界中の悪党共が大金を投じ、偽札作りに力を入れる事もやぶさかではないだろう。
以前に話した事もあったかと思ったが、日本で一番価値のある紙幣、一万円札の原価はたった20円程である。もし偽造に成功したならば、20円使えば一万円手に入る事になる。対して日本で最も価値の無い硬貨、一円玉の原価はおよそ2円程度であり、こちらは偽造したとしても1枚につき1円損してしまう事をご存じだろうか。
大抵の人間は一円玉より一万円札の方が遥かに格上であると認識しているだろうが、本当に価値があるのは一枚の一万円札より1万枚の1円玉なのかも知れない。と言っても、財布の中に入れておけば大変だ。買い物の度に長蛇の列を作る事は目に見えている。現実的に全ての金を1円玉に換金するのは無理な話だ。
そんな諸君らに朗報である。硬貨は金額が増える程にその原価率は下がる。100円玉の原価は約25円であり、本来の四分の一程の価値しか持たないが、10円玉に限っては、なんと原価がおよそ10円。損もせず得もしないバランスが取れた硬貨なのである。
一円玉よりもかさばらず、絶妙な線で損をしない10円玉。小銭を貯金するならば10円玉貯金をする事をお勧めしよう。
今日は万年通宝、太平元宝、開基勝宝が鋳造された日、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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