1月26日 携帯アプリの日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 さて、諸君らはこの小説を一体どの端末から閲覧してくれているであろうか。昔はインターネットを見るのはパソコンからと言うのが当たり前であった。だがしかし、時代は進み、携帯、スマートフォン、タブレットと、実に様々な端末からこの電脳世界にアクセスする事が可能となった。その通信技術を利用し、自分の端末をより便利に、自分向けにカスタマイズする機能。この文章もカクヨムアプリから閲覧されている人がいるのではないか。本日、2017年1月26日は『携帯アプリの日』である。


 2001年の1月26日、NTTドコモがサービスを開始した『iアプリ』がこの記念日の由来となる。

 若い人はピンと来ないかもしれないが、当時携帯電話と言えば通話するだけだったものに、メール機能やカメラ機能が搭載され始め、携帯事業が急激に成長していた頃である。


 諸君らは初めて自分が携帯を持った時の事を覚えているだろうか。

 私ははっきりと覚えている。あれは私が中学を卒業するほんの数日前の事だった。高校の入学祝にと、母が私をドコモショップへと連れて行ってくれた際、私は当時の人気機種、『N505is』なる機種を購入してもらった。初めての携帯電話に浮かれる私。夢中になってカメラで部屋中を撮りまわった。卒業式の際には、是非ともこのカメラで、それぞれ違う道を歩む学友たちと一生に残る記念撮影をしようと心に決めたのであった。


 携帯を手に入れたその夜、私はインターネットへと接続した。当時15歳、そう、まさに春を思う思春期真っ盛りである。パソコンが無かった我が家では、普及し始めたネットを閲覧する術が無かった。だが今は違う!! 私は卑猥な検索ワードを打ち込み続け、己の中の熱いパトスを撃ち続けた。


『ご登録ありがとうございます。現在の請求金額は100,000円です。今すぐ下の振込先まで……』


 あるページを開いた時、私のN505isに表示されたのはそんな一文だった。

 私の頭は真っ白になり、その後はパニックになり冷静な判断が出来なくなっていた。泣きながら母親の元へと携帯を持っていきその画面を見せた私。激怒する母。謝り続ける私。激怒する母。

 その後、携帯本体より圧倒的に高いこの請求金額を母が支払ったかどうかは定かではない。なぜならこの時点で、私は記念すべき初携帯を母に没収されたからだ。

 結局、卒業式を終えた教室の中。学友たちが各々持参した携帯電話で記念撮影をする間、私は作り笑いでそれらに映らざるを得なかったのである。




 今日は携帯アプリの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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