1月16日 禁酒の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 さて、忘年会や新年会と、諸君らは胃に負担を掛け過ぎていないだろうか。そんな人にこそ今日と言う日を知ってもらいたい。本日2017年1月16日は、『禁酒の日』である。


 1920年の1月16日、アルコールに批判的であった清教徒の影響が強く、アメリカで禁酒法が実施された。すでに18の州で行われていたが、この日を境にアメリカ全土に広渡った日である。


 だがこの禁酒法が思わぬ弊害を生みだした。アルコールの好きな諸君らは、ある日突然それが禁止されてしまったらどうするだろう。なにもアルコールだけにとどまらず、例えばネットが禁止されたり、炭酸飲料が禁止されたり、煙草が禁止されたとしたら?

 当然ながらすぐに諦めがつく話ではないだろう。結果、この禁酒法が生み出したものは、密造酒。つまりは非合法で作られる酒達であった。

 さらにはそれらを密売する存在である。それまで、ギャンブルや窃盗に納まっていたマフィアはアルコールのブラックマーケットにより栄えてしまった。かの有名な『アル・カポネ』が勢力を伸ばしたのもこの頃である。

  結局、何の利益も出さぬまま、1933年に廃止されたこの禁酒法は世界最大の悪法と呼ばれるに至ってしまう。


 裏社会が栄える時、それは、表で禁止されているなにかを民衆が欲しがっている時だと言われている。現在であれば、覚せい剤を始めとした薬物がそれにあたるだろう。裏社会でしか手に入らぬそれらを欲しがり手を伸ばしてしまった時、闇はさらに深まるのだ。


 幸いにも、現在アルコールは法律で禁止はされていないが、もしまた禁酒法が確定してしまった暁には、ぐっと我慢できる強い意志が必要になりそうだ。




 今日は禁酒の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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