1月12日 スキーの日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 諸君らはスポーツはお好きだろうか? 趣味としての楽しみのみならず、体を動かすと言うのはとても健康的であるという事は説明するまでもない。さらには運動することによって、日々募る現代社会のストレスから解放されると言うデータも出ているからやらない手はないだろう。中には季節限定のスポーツもある。本日2017年1月12日、冬の寒さが身に染みるこの日に『スキーの日』を紹介しよう。


 スキーの日は1994年、あの有名なミズノの直営店、エスポートミズノが制定した日である。なぜこの日にしたのか、それは1911年、新潟県の青年将校がオーストリアのレルヒ少佐にスキーを習った日、つまりは、日本人が初めてスキーをした日であるからだ。


 諸君らはスキーとスノーボード。どっちが好きかと聞かれたことはないだろうか。私は人生において何度もこの質問をぶつけられた。だがしかし、私はこの二択に答えることが出来なかった。なぜなら、どっちも経験した事が無いからである。あえて言うならソリ派だ。


 大体この時期にわざわざ血液すらも凍り付きそうな気温の雪山まで赴き、なにをするかと問われれば摩擦力の少ない雪の上を滑って遊ぶだけなど馬鹿げている。幼少時より一貫してインドア派を貫いてきた私にはまるで縁のないイベントだ。


 しかし、私はスキーもスノーボードも一生縁はないだろうが、毎年この時期になると雪山には行きたいと密かに思っている。場所も決まっている。そこは長野県白馬村。勘の良い方はお気づきだろう。なにを隠そうこの村にあるペンション『クヌルプ』は、雪山にスキーに訪れたカップルが殺人事件に遭遇すると言うサウンドノベルゲーム、『かまいたちの夜』の聖地であるからだ。


 幼少期よりゲームを嗜んできた私は、いつかこの地を訪れたいと毎年の様に思ってきた。かまいたちの夜により生涯をチュンソフ党に捧げると誓った幼少期の私よ。すまぬ、どうやら今年も訪れる事は出来無さそうだ。


 サウンドノベルと言うゲームは、画面に映し出された文字、つまりは小説を読みながら話を進めていく。その名の通り、BGMや効果音のついた小説と思ってくれてもいい。主人公達の辿る運命を、幾多の選択肢の中から選び抜き決定していくものだ。

 HPか説明書か、どこに書いてあったのかは定かに思い出せないが、そのゲームの製作者の一人はこう語っていた。ゲームと言うのは年々進化の一歩を辿っている。グラフィック、音声、操作性。一昔前のゲームは今の子供たちには受け入れられない。だが、サウンドノベルは違う。サウンドノベルは文章こそが肝であり、それは幾年経とうが色あせない。おこがましい話ではあるが、私も一人の物書きとしてこの一文に励まされた時がある。


 雪山に行くのが億劫だと思われる諸君、諸事情により遠出をする時間の取れない諸君。是非この時期に、幾年経っても色あせぬ至極の名作、『かまいたちの夜』をプレイしてみては如何だろうか。きっとそれは、諸君らの心を雪に囲まれた密室へと引き込んでくれるだろう。




 今日はスキーの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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