28 SF、トイレ、コーヒー

 外からノックが聞こえる。しかし私は焦らず豆を挽いて水を火にかけ、小説の昨夜の続きを楽しむ。この憩いの時間は誰にも邪魔されてはならないのだ。

 湯が沸いた頃にはノックは聞こえ得なくなっていた。読んでいたSF小説もそろそろ終わってしまいそうだ。そろそろここから出なくてはならないかもしれない。

 籠城を初めてそろそろ1週間たつ。外のゾンビたちは生前の習慣なのか1日に何度かここに入ろうとするが、中に人が入っていると分かれば無理に入ってこない。しかし食料も娯楽もつきかけては限界がある。おそらく今は誰もこの辺りにはいないだろう。

 そうして私はトイレから出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る