15 大河、怒る、口笛

 かつてロシアの大陸にあべこべのムフという男がいた。なんでも言われたことと反対のことをするのでそう呼ばれていた。そんな男は誰にも好かれないので、ムフは各地の村を転々として物乞いをしていたとか、盗賊や詐欺を働いていたとか言われていたらしい。ある日ムフが川沿にいた時、道行く陰で子供が口笛を吹いて注意されているのを聞いた。自分も子供頃よく注意されたのでよくあることだと聞き流そうとしたが、そのあと祖母らしき老婆が言った言葉が気にかかった。「口笛は災いを呼ぶんだよ、特にここの川には恐ろしいものがいるんだからね」

 これを聞いたムフは早速川の中腹あたりに行って口笛を吹いた。すると川に鎮められていた悪霊が目覚め、悪霊はそのまま怒り狂って川を氾濫させた。ムフも村も洗い流し、今ではその川は有数の大河であるヴォルガ川となっている。

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