13 汽車、トカゲ、死人

 重い金属がぶつかり合う音がして、汽車が出発した。車内灯は気がおかしくなるぐらい明るい。目を閉じたいのに体は全く言うことを聞かず、意思と無関係に規則的に瞬きをし続けている。向かい合った長椅子の向かい側では死人のような肌をした人間ができものから緑色のゲルをじくじく染み出させていて酷く臭う。

 ドアが開く音がした。節くれだった指の車掌は腰のところからトカゲの胴体が付いていて、この明かりの中でも平然と歩いて切符を要求してくる。向かいの男はさっきから動かず、車掌はその男の腕を引っ張って外してしまった。男の腕は丸い機械部品になっていた。車掌はそのまま男をバラバラにして、服を引き裂いて切符を手に入れるとこちらに向き合った。切符を渡そうにも体は動かない。車掌は全く同じように腕を引っ張って外してしまった。首が放り出されるて上に向いてしまった。光が直接目に入り叫ぼうとしたが声が出ずすぐに視界は光で塗りつぶされ紫と黒のマーブルになった。トカゲの足音はそのまま遠ざかって言った。そのまま頭は汽車がガタガタいう単調な音を聞き続けた。頭が冷たいものに触れた。緑のできものだろうか、鼻は同じ臭いを嗅ぎすぎて何も感じなくなってしまった。音だけが聞こえる。ガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタン

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