火星の子 ~始動~

 私、ヘラは勇気を振り絞り彼に話しかけた。

「私たちで部活を考えたんだけど、どうかな…もしよかったら入部してくれないかな…?」


 遡ること、5日前…。「はぁ…」私、マーズ=ヘラ=マルスは、思わずため息を吐いてしまった。気になって声をかけてきたのだろうか、「どうしたんだい?ため息なんかついて。ヘラらしくないじゃないか。何か悩み事でも?」何処か気だるい雰囲気を感じさせる、灰色の垂れ目と、ショートカットが特徴の小さな女の子。マーキュリア=ヘルメスが話しかけてきた。「まぁ、ちょっと宇佐美くんの事で…ね。」宇佐美くん。一昨日この小さな学校に転校してきた、学校唯一の男子生徒だ。「彼、何か近寄りがたいというか…固ッ苦しいというか…何かそんな感じするでしょ?だから、どうにかしてその雰囲気を少しでも和らげたらな~って思ってさ。だけどどうすれば良いんだろうって考えるとわからなくって。家が近いから話しかけてみたりはしてるんだけど…。」そうだ。私は彼に「一緒に帰ろう。」とか「お買い物行かない?」とか色々な手を尽くし近づこうとしている。しかしいつも返ってくるのは、「別にいいや。ゲームしたいし。」この一言だけだ。学校でも大体休み時間は寝てるし、お昼ご飯になると真っ先に弁当を抱え、トイレにダッシュそしてしまう。そんな彼を一体、私はどうすればいいのだ!考えれば考えるほど訳がわからなくなってくる。

 「彼、確かゲームが好きって言ってましたよね?」横から優しい声がした。エメラルドの様に美しい目。緑色に輝く長く美しい髪の毛。まさに女性を思わす肉体をした、周りより少し大人の風貌を漂わすが何時も何故か少しだけ草花の香りがする彼女。ジュピルス=レダこそ、この声の主だ。「まぁ、そうだけど…ゲームなんて学校に持ってきちゃいけないし…。」原則として、ゲーム機類など、基本的に学校で使わない物は持ってきてはいけない事になっている。「持ってきてはいけないのなら、持ってこれる様にすれば良いのではなくて?」目はターコイズのような色をしてをり、水色が混じったようなきれな黄緑色の髪の毛を赤いリボンで一つに括っている、少しお嬢様気取りの彼女は、「アースリア=ウラノス」だ。

 「でも、どうやって…。」私が悩んでいると、眠たそうな(というとりは寝言に近い状態)声がした。

 「…b…ぶ……ぶか…ち……部活…。」椅子には座っているが、首から下はすっぽりと寝袋にいつも包まれている。何時も目は閉じられており、寝袋を頭から被り髪の毛はショートカットかロングなのか判らないな娘。サターデ=オクト=デメテルの声がした。すると周りの皆が、「おー!」っと声を上げた。

 「ゲームですって!?ハァ…ハァ……私、早くヘラにチェックメイトって言われた~い。寧ろ、今すぐにでも言われたい。」息をハァ、ハァ…。っとあらげはしたなく唾を垂らし黄色い目を爛々と光られ、ツインドリルの様にカールした髪を、犬の尻尾の様揺らしながらに私に欲情するのは、クラスの下ネタ番長の二つ名を持つ、アフロディーテ=メティスだ。「へぇ~そうなんだ。だけどね、今それどころじゃないからその話は流すね~。」っとめんどくさい話は流させてもらった。

 「ゲームって一言で言ってしまっても色々有りますけど、皆様そこはどうなさるおつもりで?」ウラノスが質問してきた。が、「その心配入らないよ。」すぐに、横からヘルメスの声がした。「確かに。だってヘラが色々なゲーム持ってるもんね!」元気そうな声でメティスが言った。間違いではない。私の部屋はゲームだらけだ。テーブルゲームは勿論の事。テレビゲームも携帯型ゲームもマルチプレイ出来るよう。全て4つ以上は綺麗に保管してある。カセットも、錬金術で色々作るゲームから、皆でペンキ塗りをするゲームまで大体の物は持っている。

 「でも、ただゲームをするんじゃちょっとつまらない気がするわ。何か罰ゲームがないと。ウフフ……。」ちょっとSッ気のする声で発言したのはレダだった。「確かにそうだね。う~ん、でも今すぐに考えることではないから、考えるのは後でもいいかな。」「それじゃ、大体の事は決まったことですし、バエル先生に報告ですわよ!」ウラノスは妙に張り切っていた。

           «移動中»

「う~ん。ゲームですか…そうですねぇ…先生としては反対したいところですが、先生も鬼じゃありません。これでも人なので、あなたたちの部活動を許可します。」

 「ヤッターー!」歓声が上がる。「でも、次の事を守ってください。その1、校舎を壊さない。その2、成績を落とさない。これを守ってください。他の先生には私から話しておきます。それじゃ、皆さん。宇佐美くんと仲良くなれるよう、頑張ってください。先生も応援してます。何かあったらすぐに言ってくださいね。」「はい。ありがとうございます。」とりあえず、許可は下りてよかった。約束の事は少し気にかかるが、一人一人が自重すれば良いことだろう。「それじゃ、明日からゲーム部はじまるます!」

 部室としては、荷物倉庫と遊ぶ場所で二部屋借りることが出来た。荷物を運んで詰めるのには、4日もかかってしまった。

そして今日に至る訳だが…。「ゲーム部って言っても具体的にはどんなことするの」宇佐美くんからの質問だ!そうだ、私はこれを待っていた!「テーブルゲームからテレビゲーム、携帯型ゲーム色んなゲームで遊ぶの、そして負けた人、又はグループは罰ゲームで何かするって訳。…どうかな。宇佐美くんいっつも一人だし、私たちと皆で楽しい時間を過ごそうよ、ね。いいでしょ。」思ったことを全部口に出してみた。どうだ、さぁ…。「うん、…まぁ…、いいよ。でも、手加減しないからな。」

「望むところだよ!私たちだって強いんだから、がっかりさせないでよね。」こうして、私たちゲーム部は活動を始めた。

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