火星の子 ~登校~

 後ろから声が聞こえた。女子の声だ。振り向こうとしたその時、俺は考えてしまった。『まて、俺!今ここで期待しながら振り向いてしまってもいいのか?声は確かに可愛い。家でゲームをプレイするときのボイスとして欲しいくらいだ。しかし、可愛いと判っているのはあくまでも声だけだ。見た目が可愛いかまでは判らない。振り向きたいけど、勇気がでない。何だこの気持ちは。というか何故俺はこんなにくだらないことで。悩んでるんだ?いや、くだらなくないから悩んでるんだ。ええい!かまわん。振り向こう!』と三秒弱の間考えただろうか、目を閉じながら振り向き、目を開くと…。

 いない。彼女はいない。そこに姿はない。すると急に視界が180度回転した。「いいかい?私は君に『宇佐美 空くん』かと聞いているんだよ?でも私は心優い、慈悲深い人だから、もう一度聞いてあげよう。君は宇佐美 空くんなのかい!?」

「…は、…はい。俺は宇佐美 空だけど。」

「やっぱりだ。私の勘は当たっていたよ。流石は私だ!…。」

 可愛い。なんだこの可愛い…いや、可愛いよりは美しいだ。なんだこの美しい生き物は。シルクのように美しい白い肌。何にも例えられない整った顔には、ルビーの様に内側から燃えるような赤をしている目が二つ輝いてい。燃え上がる焔を連想させるようなその美しい深紅の髪の毛は、普通はひとつで括るお嬢様結びを二つにした、[お嬢様結び二つver]のような感じで括られている。身体は出るところ女性らしくが程よく出ているといった感じだ。実にたまらん。

 「お~い。聞こえてる?」彼女が目の前で手を振りながら確認を取ってくる。「う、うん。聞いてるよ。」「じゃあ、私がさっき何の話してたか言ってみて?」ダメだ。全く聞いていなかった。「アハッハッハッハッハ……。」取り敢えず笑ってごまかそう。っと思ったが、

 「笑って許されると思います?」

ダメだ。声がマジだ。正直に言おう。「すまん。聞いてなかった。」

「…そ、まぁいいや。取り敢えず学校いこ。遅れるよ。君は私たちと同い年とはいえ、一年学校をサボった訳だし。転校生みたいな扱いを受けるはずだから。っさっさと行ってっさっさと学校のみんなとも仲良くなろ。」っと言って彼女は走って行ってしまった。

 自分も後から走ったが追い付ける速さではなかった。『そういえば、彼女の名前は何だろうか…。』と思ってるうちに学校に着いてしまった。


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