最後の魔女56 高位悪魔2

 やられたらやり返す。


 私が1人闘志に燃えていると、背後から近寄る気配が現れた。


「遅くなってしまった。後方部隊の絶滅を確認した」


 闇王べテルギウスが悪魔の刺客を倒して私に合流する。


「後は我が引き受けよう。主は高みの見物をしているがいい」


 まさに悪魔vs悪魔。


 うん、なかなか様になってるね。

 元々闇王べテルギウスは、私がまだ見たことなかった悪魔を脳内イメージして創造した眷属シャナリオーゼなのだ。


 ギウスは、一瞬の内にメフィストとの間合いを詰めると、その勢いのまま自身の爪を振るった。


 《無限爪牙インフィニティクロウ


 ギウスは自身の5本の爪を刀のように伸ばし、目にも留まらぬスピードでメフィストを斬り刻む。


「ふん、その程度躱すまでもない」


 メフィストは振るわれた爪全てを一本の剣でうけとめる。


 《流星斬撃シューティングエッジ



 瞬く間に放たれた斬撃の数は100にも及ぶ。

 一撃一撃が鮮やかな閃光が迸ることから流星と名付けられていたその斬撃は、見るものを魅了する効果でもあるのか、敵にも関わらず思わず見入ってしまった。


 あ、ギウスが光の粒子になって消えていく⋯。


 リミッターを掛けてるとは言えギウスが一瞬か。やっぱりあの悪魔強いよ。


 《永続氷嵐エターナルブリザード


 私が目を奪われている隙を狙い、背後の大層立派な漆黒の羽が羽ばたいたかと思えば、凍てつく程の冷気が私を襲った。防御膜で防いでいても冷気を通す辺り、かなり強力。


 《聖域展開セーフティドーム


 聖域の輪郭に沿って段々と凍っていく。

 えっと、あ、この魔力の減り具合は危険。展開して少し後悔した。



 《自動発動眷属召喚オートサモンシェリ



 保険の一つが自動発動してしまった。


 私の前に一人の少女が降臨する。見た目の年齢的には、私と同い年くらい。

 だけど、シェリちゃんは、人族をイメージして創造したわけではない。


 彼女は⋯⋯


「誰⋯⋯私のリア様をいぢめているのは?」



 シェリちゃんの身体がだんだんと赤みを帯び、それに付随して周りの温度が上昇する。

 カッチカチに凍っていた辺り一帯が今度はアツアツな程に様変わりしていた。

 右腕は背丈の数倍のサイズに膨れ上がる。先端の形はハンマーのような形状になっている。


「潰れて消えなさい」


 ブォンッという音が後から聞こえる。

 振り下ろされたハンマーの先にいたのは、必死に抗っている悪魔メフィストの姿だった。


「グッ⋯くそっ⋯⋯なんだ貴様は、そ、それになんて力だ⋯」


 《紫電》


 バチバチと音を立て、シェリの全身が帯電する。

 その全身を覆っていた電気が右腕へと集束していく。

 電撃を纏い押し潰そうと考えていたシェリだったが、次いでメフィストの姿が消えた。


 たぶん、さっきの転移系の魔法かな。私と違って回数制限はないみたい。


 何処へ飛んだのか探していると、私が見つけるよりも早くシェリちゃんが見つけたらしくその場から跳躍する。


 次の瞬間、腕先を巨大なフォークのような形状に変化させ、そのまま串刺しにされたメフィストの姿があった。

 転移で逃げた先で姿を隠して潜伏していたようだ。


 一度ロックオンしたシュリちゃんの前では何人たりとも逃げることは叶わない。

 彼女は少女の形をした魔導兵器・・・・


 あれは私がまだ幼かった頃に母に読んでもらった絵本に出てきた機械の少女。 彼女は戦闘はしなかったけど、その時の記憶が凄く残っていて創造して眷属となった。着ているフリフリのドレスは想像も出来ない程に硬度な造りになっている。


 メフィストは口から業火を吐き出す。

 シェリは無防備のまま、まともに浴びてしまう。普通の生物ならば黒焦げになっていただろう。

 だが、機械であるシェリは全く効いていなかった。


 《紫電》


「ぐぁぁぁあああ!」


 お返しとばかりに感電させ、トドメのレーザービームを脳天にお見舞いした。


 メフィストは灰へと姿を変える。


 シェリちゃんは振り返り、こちらへ向かい歩みを始めた瞬間だった。


 灰の中から出てきたメフィストが現れた。

 先手を取られたシェリだったが、驚異的な反応を見せ、メフィストの首を掴むも、メフィストは持っていた剣でシェリの首を切り落とす。


 そのまま地面に首が転がる。

 しかし、シェリの胴体はメフィストの首を掴んだまま離さない。


「少しだけヒヤッとさせられたが、所詮は下等種族。我ら悪魔の脅威になるはずなどな⋯⋯なっ⋯」


 メフィストはその眼を見開き、口をパクパクと動かしていた。

 そのまま踠き抵抗するも、シェリはメフィストの首を絞め、そのまま引きちぎってしまった。



 ガラスの破れる音が辺りに響き渡る。



 気が付いたら先程までいた草原の景色が広がっていた。

 どうやら、結界が壊れたみたい。

 メフィストは、今度は灰にはならず、その場でドス黒い血を流し、ピクリとも動かなかった。


 シェリちゃんは、自分の頭を拾い上げるとそのまま雑に元の位置へと繋ぎ合わせる。


 何ともシュールな光景だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る