第5話 くっ殺と卑猥な罵り合い
次の日
同僚「お疲れ」
「ああ…お疲れ」ゲッソリ
同僚「おわっ!?なんでそんなゲッソリしてんだ!?」
「う~ん…。なんつーか…。一人暮らしに疲れた…ってか…」
同僚「あー…それ分かる分かる」
「うっせ、幼女手篭めにして一緒に暮らしてるくせに…」
同僚「いえ、もう20歳で結婚してるんで合法」
「うっせ…」ヨロヨロ…
同僚「なぁ?どうしたんだ?本当に大丈夫か?」
「…ぎりぎり…だいじょばないな」
同僚「…なんかあったのか?」
「…話したって信じらんない内容だよ」
同僚「…」
同僚「事実は小説より奇なり…。信じるよ。俺もそう言う体験してんだから」
「…」
「…はぁ。絶対笑うなよ?俺からしたら深刻な問題なんだから…」
同僚「ああ。話してくれ」
「…朝、目が覚めたらファンタジー異世界のち○ぽになってた件」
同僚「日本語でおk」
第二夜 くっ殺と卑猥な罵り合い
…。
ネムい…。めちゃくちゃ眠い…。
くそ…夢なんか見なけりゃ、速攻眠るのに…。
…。
結局、同僚との話は半信半疑のままで終わった。
そりゃそうだ。傍から見れば、ただの欲求不満になるだろうなぁ…。
それでも、奴は内容を理解した上で、同情してくれる優しさを見せつけ、同時に解決策1「物語を進めて終わらせる作戦」を作り上げてくれた。
感謝。
よし。まずはそれを試すまで!!
今日は心を強く持って就寝しよう!!
大丈夫!俺なら出来る!もう突っ込まない!絶対突っ込まないからな!!
…。
…。
…。
「ん…?」
???「起きたか…ティンポよ…」
「…え?」
女騎士「おはよう。良い朝…では無いな」
「…え!?何この状況!?」
ジャラリ!!と音を鳴らす鎖が、壁から俺を欲しがるかのように腕へと巻きつき…。
ゴトリ!と、見るからに重そうな鉄球が、足へと繋がって…。
「牢屋じゃねぇか!?」
女騎士「ああ。牢屋だ…」
くそっ…!女騎士も鎖で繋がれててめちゃくちゃ素晴らしい組み合わせですね…!
「な、何があったんだ…!?」
女騎士「…昨日の襲撃。覚えているか?」
…サキュバスに部隊を壊滅させられて…。
…そして…?
女騎士「…あの後、本物に戻ったティンポが竿を振るった…」
女騎士「確か前に言ったはずだ。ティンポは竿の腕で私に勝利している。…本物のティンポは…な?」
女騎士「…私が竿を放っても、私よりも早く竿を突き付ける力を持っている…」
「た、確かそれで俺が前線に…」
女騎士「前立腺の事か?」
「ああ、そう。それ」
…。
なんか、心を強く持とうとか、突っ込まないとか言ってたけどさ…。
諦めよう。色々と。
女騎士「…そうだ。まあ、一種の意味で期待していたんだ」
女騎士「偽者のティンポの腕が弱くとも、19時になれば勝機はある…と」
「…なるほど」
女騎士「まぁ…あのサキュバスの軍勢を考えるに、本物のティンポであっても辛かっただろう…」
「…」
女騎士「貴様は逃げて正解だった」
…。
そうだ、逃げたんだ。
俺は…国を背負わずに逃げたんだ…。
…いや、本当に夢ならば逃げようがどうでも良いのだけど…。
俺は、この世界の…その…。
なんと言うか、実体感に不安を覚えていた。
例えば、夢の中で異世界に行く。
魔法を使って空を飛んで…。
きっと、多くの人達が少年や少女の時代に見たり、体験した事があるだろう。
…だが、この世界は少し違う。
実体感が、まるで夢とかけ離れているんだ…。
手触り、香り、そして情景…。
その全てが立体的で、現実的で…。とてつもない生活観を感じた。
城のバルコニーから見下ろせば、町人達の過ごしている様がいくらでも見える。
それぞれがそれぞれ、RPGゲームのような「ただ、そこに居る」なんて見ためではなく、実際に見ている風景…つまり、一種のリアルのように思えたのだ。
いや…。リアルなどでは飽き足らない。リアルどころか…その待ち人のそれぞれが背景に成り下がっていない…。
これはもはや、現実だ。
人々が歩く瞬間、物を落として拾う様…。
…もしもこれが夢だとしたら、同時に見えている千を超えるであろう人達の動きを処理しきれるのだろうか?
夢のようにぼやけもせず、はっきりと、そしてくっきりと見える看板の数々…。
他にも、兵器。訓練するドワーフ達。カノンの轟音。火花。炎。
…。
…俺が本当に異世界に来ているかのような…。
それを証明するかのような感覚…。
…。
そして…信じたくないが、もしもこれが「他の世界の現実」だとしたら…。
消極的に物語をBADENDに進め…。
まるで他人事のような行動をしていて…。
…。
…。
…。
ティンポと言う男は、愛国心が強いのだろう。
そこに居る人々を幸せにしたいのだろう…。
…じゃあ俺は…?
…俺は…。
…少なくとも、ティンポの名を語るのにふさわしくないのだ…。
「…」
「なあ、偽者とか本物とか…さ。はっきり言って分かり辛いと思うんだ…」
女騎士「…確かにそうかも知れぬな…」
…。
咄嗟に出た言い訳。彼女はその後ろに隠れた恥ずべき心情を見なかった…。
…何故か、ほっとしてしまう…。
…。
とにかく、話を進めよう。
「…俺の時は、俺の名前を呼んで欲しい。そうじゃないと混乱してしまう」
女騎士「本当の名…?」
「俺が住んでいる、「俺からしたら現実世界」での呼び名だ」
女騎士「…つまり、お前が飛んでくる前の名前だな?」
女騎士「よかろう。なんと呼べば良い?」
「…分かってもらえて嬉しいよ」
…。
彼女はキリッ…とした表情でこちらを見つめる。
その眼光には正義を感じた。
…だから俺は、嘘偽りもなく、ただ…名前を言うんだ。
「俺の名は…「来世」(らいせ)だ」
女騎士「ぶっ殺すぞ」
「!?」
ふえぇ!?
女騎士「ライセっつったか貴様!?ライセ!?分かっているのか!?本気か貴様!?貴様本当はこっちの事を知っているのではないのか!?!?」
「何!?なんなの!?ライセにどんな意味が含まれてるの!?」
女騎士「こちらの世界では………の下劣な言い方だ!!」
「…なんですって?」
女騎士「だ…!だから…!」
女騎士「ぺ…ペニス…だ」
「…」
え?つまり…?
え?下劣って?
…え?つまり…?
おてぃんぽ?
…え?俺の本名もチンポって事???
俺の名前、そんなエグイの???
…。
なんとなく、俺がこの世界に呼ばれた意味が分かった気がする。
…。
いやいやいやいや!!そんな理由で呼ばれたくねぇよ!!!
女騎士「…ほ、他の呼び方は無いのか!?」
女騎士「ほら!あれだ!ファーストネームを教えろ!!」
「み、苗字って事か!?」
女騎士「み…?そ、それは分からんがアレだ!」
女騎士「私で言えば!マンコ=ボルチオのボルチオのような…!」
「分かった!!ファーストネームは分かったから黙れ小僧!!」
女騎士「誰が小僧だ貴様!?」
「ネタにしかなんねーんだよ!?これが普通の異世界だったら順応しようと頑張れるけどよ!?」
「何がボルチオだ!?馬鹿じゃねーの!?」
女騎士「き!貴様のような下劣でアホのような名前の男に馬鹿にされたくないぞ!!??」
「どっちも主観で言えば馬鹿しかいねぇんだよこの世界!」
女騎士「やかましい!!じゃあ貴様のファーストネームはなんなんだ!?」
「田中だよ田中!!まだ文句あるか!?」
女騎士「またも隠語ではないか!!このスケベが!!」
「またかよ!?なにになってんだよこの世界の田中は!?」
女騎士「ペニスから1リットルも出る白い液体の意味だアホ!!!」
「ナニになってんのかよこの世界!?!?」
例文「濃厚でぷるっぷるの田中」「ケフィア田中」
…。
つまり俺の名前は「みるくおてぃんぽ」になってる訳か…。
…。
うん。ふざけんじゃねえよ!!!!!
女騎士「貴様!?やはり分かってて言ってるだろう!?」
「しらねえよ!?知ってたら恥ずかしすぎて言えねえよチクショウ!!」
「あと1リットルも出るとか思ってたら、いつか幻滅するぞ!くっ殺女!!」
女騎士「ほ!本物のティンポは毎回それだけ田中を出すんだ!!」
「マジかよ!?なにそれ怖い!?」
女騎士「い、いいから他の名前は無いのか!?貴様狂ってるぞ!?」
「俺の主観じゃこの世界が狂ってんだよ!!」
女騎士「な!?な、ならばミドルネームだ!!」
女騎士「私はマンコ=マンゲ=ボルチオだ!!」
「分かった!俺が悪かった!!俺、ミドルネーム無ぇし終了!!」
「はい!もうやめ!!この話題おしまい!!ごめんなさいね!?色々と!?」
女騎士「くっ…!何故か腹が立つがやめておこう…!」
…。
もうどーにでもなーれ。
…石畳の牢屋の中、白熱した議論は急速に冷め始める。
「ふぅ…。それならさ、お前が適当に付けてくれよ。俺の名前」
…正直、考えるのも面倒くさい。
女騎士「…確実に文句しか飛んでこないだろうから嫌だ」
「…それもそうか」
女騎士「…それならば、二人でいくつか案を出し、そして妥協点を決めよう」
「…両方でセーフな言葉を見つけるって事だな…?」
「よし…まずは俺から…」
…。
あ、だめだ。何言ってもナニにしかならない気がする…。
でも、変な名前で呼ばれるよりかマシだろう…。
「…クロス…とかは?」
勿論、大きなモンスターをハントする新作ゲームから取った。
女騎士「クロス…?クロスと言うとバッテンの事か?」
「…あれ!?別に変な言葉になったりしないのか!?」
女騎士「…14歳程まで成長した男子が考える架空戦記に登場するかのような恥ずかしさはあるがな?」
「中二病かよチクショウ!!!」
女騎士「…いや、だがこれを落とし所にしよう」
女騎士「次の案を言ったところで、私が貴様を罵る可能性が高すぎる…」
「それは間違い無いな…」
女騎士「…それでは、これから偽者のティンポの名前をクロスと呼ぶ」
…え?
何?ディルド(兵器じゃない)をクロスって呼ぶかのような?
「…まあ、不本意だけど…それで頼む」
女騎士「…はぁ。まったく呆れたぞ?クロスよ?」
「俺だって呆れ返って…もう、返す言葉もない」
女騎士「ちなみに、先の言い合いの中でさえ、貴様はスケベな単語をいくつも喋っていたからな?」
「マジかよ!?日本語怖い!?」
女騎士「その日本語と言うのもスケベな単語だ…。だが、もう突っ込む気にもなれん…」
「…そうしてくれ」
女騎士「はぁ…一生分はスケベな言葉を投げかけられたんだぞ…?もっと労ってくれてもかまわんのだが?」
「逆に、俺一人だけが異世界に来てる現実考えてみろよ?俺以外が人の事ペニスペニス連呼してくるんだからさ…」
女騎士「…確かに辛いな」
女騎士「だが、もう、そのような隠語を聞いても恥ずかしさすら無くなってしまったよ…」
「…じゃあライセって呼んでくれよ」
女騎士「何故私が他の者も居る前で隠語を連呼しなければいけないのだ?」
「…そりゃそうか」
女騎士「…クロスで頼む」
「分かった…」
…。
釈然としない。
もう、何か…こう、思うところも無く釈然としない。
逆に引っかかり過ぎて…釈然としない。
まあ、これで気が変になりそうな生活から、一歩だけ身を引く事が出来たのだろう…。
女騎士「それよりも、この牢屋からどうやって出る?」
あ、忘れてた。
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