あと数㎝が遠くて
今日は、美恵との約束の日。あのあと、男子にもみくちゃにされた将は、行き絶え絶えになりながら、なんとか脱出した。だが、男子の強さをなめてはいけなかった。そのあとも、将がいくとこ来るとこに出没し…
まぁ、そんなことはどうだっていいだろう。将は、約束の10分前に集合場所の時計の前に来ていた。ここは、たくさんの人が待ち合わ場所として利用するので、だれが誰かがわからなくなっていく
「おまたせー!」
そうこうして待っていると、向こうの方から聞き覚えのある心地よい声が風にのって流れてきた。心がふわふわするんじゃー…
今日の美恵のコーデは、上にカーディガンを羽織り、白色のワンピースを着ている。かわいい
「待った?」
上目遣いにそう聞かれる
「今来たところだよ」
大人ぶってそう答える
「ならよかった!」
笑顔ではにかむ彼女を見て、将の心はドキドキで一杯だった
「じゃあ、まずは………」
白い手に目がいく。手を繋ぎたい。将は彼女の手に自分の手を伸ばした
「きゃっ!どうしたの?」
ビックリしたように彼女が尋ねる。将は、赤面してうつむいた。心配そうに美恵が顔をのぞきこむ。将は照れて、自分の顔を覆い隠した。美恵が心配そうな顔をしている
「ごめん……なんでもないよ」
「うん……………」
何となく気まずい二人。何とかしてこの空気を変えなきゃ!と意気込む美恵が…
「ねぇ、これ可愛くない?」
といって、自分を指差す。将は首から上が真っ赤に染まった。美恵も自分がなにをいったのか理解して赤面した
「か、可愛いと……思うよ」
「あ、あ、あ、ありがとう………」
そこから二人は無言で歩き出した。距離が遠く感じる。実際にはすぐ隣りにいるのに。将の胸がドキドキする。美恵は胸がきゅぅーとしまる思いを感じていた。
将が美恵の顔を見る。それと同時に美恵も将の顔を見る。二人の視線が交差して、顔をそらせてしまう。
そこから、無事に姫のプレゼントを買い終わったと思ったら、茜色広がる景色が飛び込んできた。その光景に暫し固まる二人。二人はなにを思ったのだろうか、そのまま顔を近づけていく。あと、数㎝………
不意に美恵が将を突き飛ばす。
「……………ごめんね」
その目には涙がたまっていた。
「…………こっちこそ、ごめん」
「また明日ね」
「うん。また明日」
独りぼっちで眺める夕焼けは、なんだか悲しい気持ちがした
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