第4輪 約束

ねぇ、来世の約束、覚えていますか。


飛び級して小5にZと同じクラスになって、2年間隣の席だった。いつも成績を競い合って楽しかった。卒業前の最後のテストで、総得点で0.5点負けて悔しかった。君は小学校生活最後の賞状をくれた。異国にいる今も、すぐそばに仕舞っている。「なんでも1つ、君の言うとおりにする」という紙と一緒に仕舞っている。


あの日々のことは今でもすごく鮮明に覚えているけど、前世のように遠い。


君も一緒に東京に来てくれると言った。実際に日本語も勉強し始めた。わたしは君のいる将来が楽しみだった。

でも突然、やっぱり行けないってあっさり言われた。


隣に君がいたらなぁって何度思ったことか。

約束を破る人は大嫌いなのに、君のことはそれでも嫌いになれなかった。


君とはなんでも話すけど、恋バナだけはしなかった。

初めて君の口から「彼女」が出たと思ったら、「怒っててしばらく連絡できない」が続いた。

すぐ分かった。その「しばらく」は長く続くと。


君と語り合ったアニメの続編が見れなくなった。タイトルを見かけただけで胸が痛む。

本当にしんどいことって、逆にだれにも話せなくなるんだね。初めて知った。


あれから一年が経った。

恐る恐る連絡してみたら、「誤解は解けた。彼女にちゃんと説明しておかなかった僕が悪かった。入籍した。」


へぇー、それ、誤解じゃないとしたら?

10年間待っても大人にならなかったのになに急に成長してるの??

アニメの話であんなに「ぽっと出の女より最初からいるひとだよね!!!」って言ってたのに、結局君もぽっと出の女に流されるの???


からかうと、笑窪と八重歯を見せながら「人間の我慢には限度があるよ」と怒る風の君は今日も夢の中。


本当は分かっている。

わたしは君にとって、大したことないから、一緒に日本に来てくれなかった。それだけのことだ。


当時三角関係(?)だったSと付き合った。彼は連絡を取り合った翌日には来日のビザ申請をしてくれた。ラブラブになった。入籍日も決まった。でもやっぱり、人種が異なっていた。つまらない理由で別れた。


わたしは東京砂漠で、今日も一人ぼっち。

今世はもうだめなんじゃないかなぁ。


「来世は無機物がいいなぁ。砂とか。」

「じゃあぼくは風になる。」


※中国の超人気恋愛ドラマの主題歌は「あなたは風、わたしは砂」という歌詞

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彼岸花 江戸彼岸桜 @Lycoris_radiata

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