第2輪 桜の木の下で
所属大学ではTwitterが非常に流行っていたので、私も始めてみたら、すぐハマってしまった。
春休みに、花見と称して、大学のツイッタラーたちが集うオフ会が行われた。そこで、「いいね」をし合うだけの仲だったKとの初対面を果たした。
あいにく小雨でしたが、涼亭での花見は一層風流だった。
Kと目が合った時、一週間分の勇気を使いきって、「Kさんなんだね、こんにちは♫ りんちゃんです。」と元気よく挨拶してみた。
少し猫背のKは、「あ、どうも」と元気なさげに答えた。
工学系男子との会話では定番の、研究の話を振ってみても全然盛り上がらなかった。私の勇気ゲージがすっかり貸し越しになったので、一旦撤退した。
花見が終わって、片付けに入り、私はゴミを集めて捨てに行こうとした。しかし貧弱な私には荷が重かった。そこにKが手伝うと名乗り出てくれた。そうして、小雨の中、私は片手に長傘、片手にゴミ袋、Kは両手にゴミ袋、初対面ながら相合傘でゴミ捨てをしてきたのだった。
その後もKとは、しばらくは「いいね」をし合うだけの仲のままだった。
初夏の匂いがしてきた頃、Kの「五月祭行きたい」のツイートにいいねをしたら、一緒に行くことになった。21世紀に感謝。
初々しい限りのデートをした。展示の背景知識を熱心に語ってくれるKの姿は、なんだか輝いて見えた。
話の流れで、我が大学には秘密の地下施設や、絶好の星空鑑賞スポットがあることを知った。好奇心旺盛下心満載の私は、「一度行ってみたいなぁ」と言ってみた。そうしたら、Kは快諾してくれた。夏の楽しみができた。
笑顔だけじゃなく、涙もある夏とも知らずに。
後にKとの出会いを聞かれた時、私はいつも「桜の木の下で」と答えている。
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