第25話 東京・FM の サテライト・スタジオ にて

11月3日の日曜日、文化の日。

東京・FM の 午後2時の

『明日に架けるポップス』が、オンエア(on the air)であった。


東京・FM の サテライト・スタジオは、

山手線・原宿駅のすぐ近くの、

有名ブランドなども入居している、

表参道ヒルズにあった。


スタジオは、防音ガラスで 仕切られた 構造で、

ラジオの生放送の様子、スタジオ・フロアの出演者や

副調整室(サブ・コントロール・ルーム)の

スタッフの動きなどを、

来観者も 眺められる。


防音ガラス 越しに 見える、風に そよぐ

緑の ケヤキ並木、

行き交う 人や クルマ、

スタジオ内を 眺める 観客たち、

そんな 外の 風景を 取り入れることで、

のびのびと リラックスして、ゲスト(お客さま)や

番組のパーソナリティ(司会者)やスタッフは、

気持ちよく トークもできる、

環境のよい スタジオであった。


着席で 150人の収容が 可能な スタジオには、

グランドピアノ もある。


そんなスタジオには、クラッシュ・ビートや、

G ‐ ガールズのメンバー、

かれらの アルバム作りに 特別参加の、

パーカッションの 岡昇、

ピアノやキーボードの 松下陽斗がいる。


みんなは、いつもと変わらない、服装だが、

次々と、全国的な メディア(情報媒体)の取材には、

少し感情も高揚ぎみである。


「リスナーの みなさまには、

オープニング として、シングル・リリース された ばかりの

I FEEL TRUE (ぼくが本当に感じていること)を、

お聴きいただきました!


なんか、ロックの大作といいますか…、

名曲ですよね、ねえ、知美ちゃん!?」


といって、パーソナリティ(司会者)、22歳の、

渋谷陽治は、パートナーの、

21歳、本条知美に、話をふる。


「はい、すごっく、ロックンロール しているし、よかったです。

美しい メロディー(旋律)の、ハードロックですよね。

それに、詩も、とても すてきです」


「そうなんですよね。

アイ・フィール・トゥルー(I FEEL TRUE)は、

1度 聴いたら、忘れられない、

そんな、メロディアスな、うつくしい 楽曲です。


イントロのアコースティック・ギターでは、

レッド・ツェッペリンの

天国への階段 (Stairway to Heaven)みたいな感じですし、


リズム・ギターの、切れのいい、

三連符のカッティングでは、

ビートルズの オール・マイ・ラヴィング

(All My Loving)なんかを、つい 思い出しちゃいます。


アイ・フィール・トゥルー(I FEEL TRUE)は、

そんなロックの名曲を、引き継いでいるような、

それでいて、音も詩も、とても ポップで、

キャッチーで、現代的なんですけど…。


この点について、この曲の作詞・作曲をなさった、

川口信也さん、

やっぱり、ツェッペリンや ビートルズは、

意識なさったのですか?」


そういって、少し遠慮がちな 表情で、

渋谷陽治は、信也をみた。


「ははは…。ツェッペリンや ビートルズは、好きですからね。

おれたちのバンドは、ツェッペリンや ビートルズの曲を

よく、コピーしては、ロックのいろんなことを

学んできたようなもんですよ。

いうなれば、おれらの音楽の師匠のようなもんなんです。

ねえ、リーダーの森川純さん。ははは…」


そういって、23歳の信也は、わらいながら、

話を、24歳の 森川純にふった。


「そうだよね。ツェッペリンや ビートルズは、おれたちの

師匠のようなものだよね。

基本的に、おれたち、クラッシュ・ビートは、

1度 聴いたら 忘れられないような、

メロディアス(melodious)な、旋律の美しい

ロックが好きなんですよ。

ツェッペリンも ビートルズも、そんな曲が得意でしたからね」


森川純が、瞳を 輝かせた 笑顔で、

バンドの リーダーらしい 落ちつきで、そう語った。


「なるほど。メロディアス(melodious)な、旋律の美しい

ロックですね!

わたしも、音楽は、美しいメロディのあるものが大好きです。

その点では…、

G ‐ ガールズの みなさんの曲にも、同じような価値観を

感じるんですけど、その点は、いかがなんでしょうか?

リーダーの 清原美樹さん。お聞きしてもよろしいでしょうか?」


と、人懐こそうな、うつしい笑顔の、

21歳の、パーソナリティ、本条知美がいう。


「わたし、知美さんのファンなんです。また お会いできて

うれしいです。知美さんのドラマもいつも楽しみなんです」


21歳の美樹は、そういて、ほほえむ。

本条知美は、女優をしている。


「美樹さん、ありがとうございます。同じ、表現者としても、

みなさんたちの音楽は、すばらしいですよ!」


「うつくしい旋律についてですけど、

曲の創作には、うつくしいメロディが、大切だと思います。

イギリスの詩人のキーツがいってますけど、

『美は真実、真実は美、これらが、私たちの知る、すべて、

知るべき、すべてなり…』 と、

わたしも、よく感じるんです」 と 美樹は いう。


「ああ、なるほど。うつくしいものは、信じたくなりますよね。

癒されるものも、うつくしいものですものね!

キーツのその詩は有名ですよね、

まさに真理だと思います」 と 本条知美。


「うつくしい メロディとか、魅力のある楽曲をつくるのって、

その人の感覚とか、判断力とかの、

センスなんだと思うんですよね。

月並みな言葉でいえば、才能とか…」と、美樹はつづけた。


「なるほど、なるほど…。

みなさんは、きっと、才能もセンスも豊かなんですよ!

これからの、ご活躍も、

わたしたち、とても 楽しみなんですけど、

クラッシュ・ビートのみなさん、G ‐ ガールズのみなさん、

今後の 抱負と いいますか、

音楽活動の計画や決意のようなものって、

何かあるんですか?」 と、

パーソナリティ(司会者)の 渋谷陽治。


「いやーあ、何も考えてないです。いままでどおり、

バンドとしては、適当に、ライブをやったりして、

時期を見ては、セカンドアルバムを出してゆくっていうか。

紅白の出場とかまでは考えたないよね?

今年は とても 無理だし。ねえ、みんな…?!」


そういって、みんなを見わたす、森川純に、

みんなからは、わらい声が もれる。


「わたしたちは、アルバムや シングルが、

ヒットチャートに、いきなり登場しちゃって、

幸運なんですけど。みなさまのお蔭ですし。

こんなことが、いつまでも、続くなんて、

信じられないですものね…」


そういったのは、19歳の大沢詩織。


「まあ、それでは、ひとことずつ、みなさんの抱負とかを、

お聴きしましょう」 という、

オールバックの髪が 似合う 渋谷陽治。


「では、レディー・ファースト (女性の優先)で、

ベース・ギター、ヴォーカルの、

弱冠19歳の、平沢奈美さん」


「え、わたしですか。そうですね…。これからも、ポップで

キャッチーな曲で、ヒットを飛ばしたいです!」


「やっぱり、ヒット曲は、ミュージシャンの夢ですよね。

では、リード・ギター、ヴォーカル、20歳の

水島麻衣さん」


「わたしは、ギターソロの、メロディアスな曲で、

いっぱい、ヒットを飛ばせたらいいなと思います!」


「そうですか、ぼくも、麻衣さんのギターソロには、

しびれている ひとりです。これからのご活躍、

期待してます!それでは、サイド・ギターと

ヴォーカル、

まだ 19歳の若さの 大沢詩織さん」


「わたしは、いい詩や、いい曲を、たくさん作れたらなと

思います。やっぱり、やる以上は、

どこまでがんばれるかと、可能性の追求もしたいですね」


「なるほど、しっかりした考えですよね。期待しています。

それでは、グレイス・ガールズのリーダーで、キーボード、

ヴォーカルの、21歳の清原美樹さん」


「わたしは、ライブとかで、このバンドを、いつまでも、

ながく 続けられたらいいなって、まず 思います。

気の合うみんなと、音楽やるのが、楽しくって…。

その結果、アルバムやシングルを出さたら、

最高ですし、ヒットも出せたら、もっと最高ですけど」


「ははは。さすがは、リーダーですよね。

最初に、みんなと仲よくやってゆければと、

願うんですからね。実際、ロック・バンドって、

いろんな事情から、ながくは続きませんからね。

では、

ドラムス、ヴォーカルで、20歳

菊山香織さん」


「わたしの場合は、楽しく、遊びながら、

子どものような 純真さで、ロック・バンドを

やったゆけたらなあって思います。

結果として、こんなふうに、ヒットが出たりして、

お金になるのも、もちろん、歓迎ですけど…」


「あっはは。そうですよね。アーティストの基本や

原則は、純真さや、無欲さかもしれませんよね。

それで、いい作品ができたら、

きっと、お金にもなるんでしょうね!香織さん。

それでは、次は、男性に、抱負をお聞きします。

えーと、今回、G ‐ ガールズのアルバムに、

パーカッションで 特別参加の、

19歳の 岡昇さん!」


「ぼくの抱負は、こんなに大成功をしちゃった、

G ‐ ガールズのみなさんや、

クラッシュ・ビートのみなさんたちと、これからも、

楽しく、音楽を やってゆけたらなぁと 思ってます。

ぼくの目標は、プロのミュージシャンとして、

やってゆくことなんですけど、

現実には、いろいろな壁があるみたいで。

個人的には、

方向性が 固まっていないといいますか、

しょっちゅう、迷いの中にも いるんです。

でも、楽天的に考えるのが、ロックン・ロールですよね。

あっはっは」


「そうですよ。岡さんは、みんなに好かれる

タイプですから、これからも、きっと、うまくいきますよ。

迷うなんて、ぼくだって、しょっちゅうですよ。

失敗や迷いもあるから、成功もあるんだと思いますよ!」


オールバックの 渋谷陽治がそういうと、

みんなも 「そうなんです!岡くんがいたから、

すべては 好循環して、こんな夢のような

ヒットも生まれたのよ!」とかいったりして、

スタジオは、わらいに包まれた。


「みなさんって、とても仲がいいですよね。そういえば、

みなさん、早瀬田大学の 音楽サークルの

ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の部員さんなんですよね。

もちろん、クラッシュ・ビートのみなさんは、

ご卒業されているわけですけど、

あ、おれとしたことが、失礼しました。

松下陽斗さんは、早瀬田大学では

ありませんでしたよね。

松下さんは、東京・芸術・大学の音楽学部、

ピアノ専攻の3年生で、20歳ですよね。

松下さんは、今回のクラッシュ・ビートのアルバム制作に

ご参加されたわけですが…。

クラシックやジャズのピアニストとしても、

ご活躍の松下陽斗さん、

これからの 抱負などが ありましたら、お聞かせください」


テーブルの メモ用紙を ちょっと見て、

渋谷陽治は そう語る。


「そうですね。音楽は、世界中の、人の心にとどく、

国際言語のようなものですから、その音楽で、

仕事をしてゆけることには、とても幸せを感じています。

これからも、みなさんと ご一緒に、

そんな音楽活動で、世の中の役に立てればいいなと

思ってます。あと、そのうち、このスタジオで、

ピアノ・リサイタルができたらいいなって思ってます」


「そうですか、こちらこそ、よろしくお願いします。

ぜひ、近いうち、ピアノ・リサイタルを実現させましょう。

ええと、

それでは、クラッシュ・ビートの、ギター、ヴォーカル、

23歳の川口信也さん、ご抱負を」


「おれはですね…。ロックバンドは、エンターテイメント

(娯楽)としての、楽しみのためと、

スピリット(spirit)的な、生きかたを求めるような、

かっこよくいえば、正義や愛のために、

やってるのかなって、思うんですよ。あっはっは。

ついつい、理屈っぽいこといっちゃいましたけど、

これからも、ライブやレコーディングとか、

楽しくやってゆければ最高ですよね!あっはっは」


「そうですよね。信也さんのいいたいことは、

ぼくも、わかる気がします。

世の中に向かって、音楽で、正義や愛を、

表現できなかったら、この世は、

おしまいな気がしますよ。まったく同感です!

あっはっは」


オールバックの 渋谷陽治の

陽気なわらい声に、つられて、

みんなも わらった。


「それでは、クラッシュ・ビートの、リード・ギター、

ヴォーカルの、岡林明 さん、どうぞ、何か」


「おれも、水島麻衣さんと同じように、」

イカした、メロディアスなギターソロのある、

いい作品に、いっぱい、出会えたらなあと思いますよ

それと、ヒットを、たくさん、飛ばせたらいいなと思いますね。

でも、楽しく ライブ やってゆくことが、第一かな」


「ぼくは、岡林さんのギターのファンでもあります。

これからの ご活躍を おおいに 期待しています!

では次に、クラッシュ・ビートの、ベース・ギター、

ヴォーカル、23歳の 高田翔太さん」


「おれはですね。好きなことをやりながら、それで、

お金も稼げたらいいかな、って、正直、

俗っぽいことを思ってます。

たとえ、貧しくたって、このメンバーとなら、

いつまでも、ロックバンドで、ライブをやりたいですけどね。

はっはっは。そして、やっぱり愛や正義も、大切だよね!

あっはっはは」


「そうですよね。高田さんの気持ちもわかりますよ。

お金って、たくさんあっても、邪魔じゃありませんからね。

つい、俗っぽいことを考えるのが、人間ですよ。

でも、正義や愛を考えるあたり、さすがだと思います!

それでは、ラストは、クラッシュ・ビートのリーダー、

24歳の 森川純さんです。純さんは、ドラムス、

ヴォーカルです。では純さん、何か、抱負などを…」


「そうですね。お金の話が出た、そのついで、

なんですけど…。クラッシュ・ビートも、G ‐ ガールズも、

バンドが 存続している間は、作詞や作曲やその他いろいろな

印税の、クレジット(信用)は、バンドの名義に

してあるんです。つまり、みんなで、公平に、お金を受けとる

システムにしてあるんです。メンバー全員で、

話し合った結果なんですけどね。あっはっは。


まあ、それはそうとして、このような作品の、ヒットは、

今でも夢のような気分です。これも、リスナー(聞き手)の

みなさまやファンのみなさまのサポート(支援)が

あってこそだと、心から感謝しています。

これからも、クラッシュ・ビートも、G ‐ ガールズも、

良質な音楽活動に、がんばりますので、

モリカワ・ミュージックともども、よろしくお願いします!」


「さすが、リーダーの森川さんです。

たいへん 貴重な、お話をありがとうございます。

そうなんですか、印税とかの クレジットが、

バンド名義ですか。みなさんの仲のよさが、団結力が、

よく伝わってくるような、お話ですよね。

お金の問題で、解散するバンドも多い 昨今ですし…。


さて、では、リスナーのみなさま、お待ちかね!

クラッシュ・ビートの、疾走するような、8ビートの、

とびきり、イカしたナンバー、Angel Rock (ロックな天使)!

お聴きください…」


ーーー


Angel Rock (ロックな天使)  作詞・作曲 森川純


街の あの子に 声かけたら ふられた おいらさ

でも あの子が 大好きさ

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


いつか あの子の 微笑みは きっと おれのもの

それを 信じて ロックンロール!

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


ああぁ なんで こんな世の中 ばかりが つづくのさ!?

これじゃぁ あの子が かわいそう

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


おれは 気ままな 街のロックンローラ という噂

でも いいさ ロック大好きさ

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


負けずに 戦い抜いてやるぜ! ロックンロール!

おれは 岩(Rock)に だってなるだろう…

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


いつかは おいらも あの子と 暮らしたいのさ

こんな 愚図な おいらだけどさ

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


あああ なんで 天使のような きみに会ったのだろう

世界の 意味なんか きみがすべてさ!

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


この世界の 儚さ 筋の通らなさ

でも、ネバー・ギブ・アップ(Never Give Up)!

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


あの子に 会えたこと そんな奇跡を 信じて生きるのさ

たとえ この世界が 幻でもね

だって、あの子は Angel Rock (ロックな天使)


そうさ まるで 魔法に かかったみたい なのさ

かわいい あの子が 忘れられない

そうさ あの子は Angel Rock (ロックな天使)だからさ


そうさ あの子は Angel Rock (ロックな天使)

そうさ あの子は Angel Rock (ロックな天使)


おいらは 気ままな Rock 'n' Roller

おいらは 気ままな Rock 'n' Roller


≪つづく≫ --- 25話 おわり---


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