第4話 ロマンを忘れたら、タダの駄女神なのだ!
深夜から早朝に変わろうとする頃、少女と幼女の2人がベッドで一緒に寝ていた。
いや、一緒というのは間違いであった少女は規則正しい寝息を立てながら、幸せそうな笑みを浮かべながら寝ていた。だが、幼女は目をパッチリと目を覚まして、隣で眠る少女、コレットの熟睡状況を確認するように見つめたり、物音一つしない静かな空間で息を顰めていた。
「昨日の夕飯でフライ返しを失敗して床に落ちたのを手で払って、ミランの皿に盛った性悪女のコレット」
その声に一瞬、眉を寄せるがすぐに安定した寝息に戻るコレット。
実際は、そうしようとしたが、ギリギリ心の呵責が生まれたらしく、リホウが美味しく頂きました。
「くっくく、どうやら完全に寝ているようなのだ」
そう言うとベッドから抜け出すと木箱に乗り、宙に浮かす。
浮かした木箱で静かにドアを開けて、閉める時にコレットの様子を見ながら笑う。
「完璧なのだ。このスマートな脱出は女神であるアタチだからできるのだ」
静かにドアを閉めようとしてるのに明らかに適当にドアを閉めるより、大きな音である笑い声を響かせる。
駄目な子あるあるNO.26
イタズラ、悪巧みをする時に笑ってしまう。
が発動中であった。
駄目っ子の王道を行くのは誰かというと女神幼稚園の試験に落ちた駄女神のティカであった。
慌てて、両手で口を押さえて、誰も起きた様子がない事を確認すると再び、笑みと共に笑い声を上げながら玄関へと向かう。
「くっくはっはは! やっぱりアタチにかかれば、夜、家から抜け出す造作もないのだ」
また我に返り、自分の口許に人差し指を当てながら、シィ――! とするとエイジェント気取りで玄関のドアに張り付く。
そして、ソッとドアを開け、身を滑り出すようにして出ると静かに閉める。
ミッションコンプリートと言いたげな笑みを浮かべると路地裏へとティカは木箱を進めていく。
それを片目だけ開けて見送っていたリホウが、くだらなさそうに、ワフッ、と溜息のような鳴き声を出して寝直す。
それを見て、同じような鳴き声を出すシュンランが、リホウの下にくると肉球パンチを入れて起こす。
起こされて不満そうに小さな鳴き声で不満を伝えたらしいリホウだったが見下ろすシュンランを恐れるように目を逸らすと渋々という感じで立ち上がる。
ティカが歩いて行った方向に歩き出すのを見送ったシュンランは、開いてる窓で寝たフリするポッターに軽く唸る。
するとポッターは、慌てて飛び上がるとリホウを追いかけて行った。
疲れたように溜息のような鳴き声をするシュンランは、駄目な男達ね、と言ってるような態度で頭を横に軽く振ると玄関を守るように、その場に蹲った。
▼
しばらく、ティカは木箱で浮きながら進み、潮風が強い小さな港にやってきた。
誰もいない船着き場で、ティカは登り始めた太陽を見つめながら笑う。
「海賊の宝はアタチの物なのだ。くっくく、手に入れた財宝で何ができる? きっと甘い桃が両手で抱えきれない程、買えるはずなのだ!」
小さいティカの両手で持てない程ぐらいの桃で良ければ、コレットがいない所でミランに上手くダダを捏ねれば手に入るレベルでは財宝と呼ばない事を駄目な子は気付いていない。
「ジジイ済まないのだ。世の中、情報戦、駆け引きなのだ。生きヨルズの目を抜け、とノルン先生も言ってたのだ」
少しも悪いと思ってない笑みを浮かべるティカは波止場の端まで来るとそこから見える小さい島を確認すると頷く。
「ふっふふ、大海賊ゴンリの財宝、今、アタチが行くのだ!」
そう言うとティカは港から空中に浮きながら、前方にある港を目指して出発した。
出発するティカを見ていたリホウとリホウの頭に乗るポッターはシンクロするように項垂れると静かに海に入り、駄目な子を追いかけて島の方へと泳ぎ始めた。
▼
早朝、眠るミランの体を揺するパジャマ姿のコレットの姿があった。
「お兄ちゃん、起きて」
「んっ? どうしたんだ、朝ご飯には早いと思うんだけど……」
パジャマ姿でミランを起こしに来る状況が珍しく、目を擦りながら身を起こすミラン。
ミランは外で寝起きする時は、目覚めがはっきりするほうだが、家では寝起きは良くなく、酷い時では揺するぐらいでは目を覚まさない事すらある程であった。
寝ぼけ眼で窓から見える太陽の加減からも、いつもならまだ寝てる時間だし、コレットもパジャマ姿だ。
パジャマ姿で朝の仕事をしない出来た妹だから、色々おかしい状況のはずなのに、コレットの表情はお怒り状態であった。
だが、どうやら怒りの矛先はミランではないようだ。
「お兄ちゃん、玄関まできてくれる?」
勿論、可愛い妹の頼みを断るようなミランではない。決して、怒りの矛先がこちらに向くのを恐れた訳ではないはずである。
ミランが自分の部屋のドアを開けると玄関のドアをドンドンと叩く音が聞こえる。
「ゴレットォ、アダチがわるがったのだぁ! もう勝手に夜に遊びに行かないから、ゆるじてぇ!!!」
この言葉とドアを必死に叩く音、そして、玄関のドアを見るとカンヌキがかかってるのを見て、全ての謎は解けた。
既にコレットのお叱りを受けた後で、ギャン泣き中のようであった。
ミランは、コレットを窺うように「ああぁ~」と言いながら頭を掻く。
「アレはお兄ちゃんの担当だから後はお願いね?」
「分かったよ」
そう言うとドアのカンヌキを抜いてドアを開けると飛び込もうとするティカであったが、ミランの後ろにいるコレットの存在に気付くと後ろに飛び退き、青い顔をして背筋を伸ばして立つ。
どうやら、今回の件でティカはコレットの下である事をはっきりと心に刻まれたようであった。
そんなティカを見つめるミランは苦笑する。
何も事情は聞いてないが見ただけで分かる事があった。
「ティカ、勝手に海に行っちゃったんだね?」
ミランの前にティカはずぶ濡れで頭にはタコを装飾してあり、後ろで濡れた体毛を身震いする事で飛沫を飛ばすリホウの傍にある木箱には活きの良い魚がピチピチと跳ねていた。
コレットの前で泣き叫ぶと余計に怖いと学習しているようで、下唇を噛み締めながら耐えるが、頭にあるタコが気持ち悪くてしょうがないようで一生懸命タコを取ろうとしている。
苦笑するミランは、長い黒髪に絡むタコを丁寧に取ってやると木箱で魚を掴まえていたいたコレットがミランを見る。
「そのタコは私が預かる。食べれるからね」
そう言われたミランは抵抗せずに手渡す。
海鮮物を手に台所へと歩く妹、コレットを見送るミランは力強く頷く。
「逞しいな。コレットはきっと良い嫁になる」
と呟きながら、相手が耐えれたら、と付け加えていると、そのコレットに声をかけられる。
「お兄ちゃん、ティカを井戸で洗ってきて。綺麗に洗うまで家には入れちゃ駄目よ」
「ああ、分かったよ」
一瞬、心を読まれたのかと恐れたミランであるが、そう返事すると手拭などを取りに戻る。手拭を手にすると玄関に戻るとミランだけと分かり、再び、ギャン泣きするティカの手を取って共同井戸に向かった。
▼
井戸に着いたミランは、泣くティカの言葉とポッターの言葉を繋ぎ合せて、おおよその事情を理解する。
探検気分でマシートの港の傍にある小島に向かったようだ。
港から出発して、たいした距離を行かない内に少し高めの波が木箱にぶつかり、その衝撃でティカは海に落ちたようだ。
沈むティカを着いて行ってたリホウに救い出されたらしい。
助かると現金にもリホウを使って島へと渡ろうとしたようだが、リホウに命令する度にリホウはティカを海に沈めておとなしくさせたようだ。
とても残念な話だが、1度では学習しなかったティカであった。
井戸に来るとまだ早い時間のせいか誰もいなく、ティカに万歳させてワンピースを脱がせる。
かぼちゃパンツも脱がして、手早く、二つを水洗いして近くの引っかけられる所にかける。
新しい井戸水を汲むとティカに被せる。
「つ、冷たいのだ! お湯にして欲しいのだ……」
「我儘言わない。温かい季節だったから良かったけど、寒い季節なら海に落ちてたらティカは無事に済まなかったかもしれないんだよ?」
そう言うミランは塩水で、からまっている黒髪を井戸水で解してやる。
手櫛ではあるが、梳けたと判断したミランは、濡れた手拭でティカの体も拭き始める。
「ミラン、えっちなのだ! 幼女趣味の変態なのだ! 良く意味が分からないけど?」
「冗談でも本気でも駄目だけど、知らずにそんな事言っちゃ駄目だぞ? 洗わないとコレットに家に入れて貰えないけどいいの?」
そう言いながら、辺りに人がいないかキョロキョロ見るミラン。
万が一、信じられ、噂が出回れば、彼女が出来る夢すら見れなくなるところだからだ。
「女の価値をフル活用するのが出来る女だと、ミドリ先生が言ってたのだ」
「ティカ、その先生の言葉は全部を信じちゃ駄目だと僕は思うよ?」
とんでもない先生がいるものだと戦々恐々するミランはティカを吹き終える。
吹き終えたティカに乾いた手拭を被せると離れた位置でおとなしく待っていたリホウを呼ぶと井戸水で海水で汚れた毛並みを洗う。
ミランに洗われて気持ち良さそうにするリホウだったが、急に反応してミランの右手の方向を見つめる。
リホウの見つめる先には、向かいの家の恰幅の良い奥さんの姿があった。
「おや? ミランじゃないかい。それとそこいる子は最近、ミランに拾われた子だたっけ? 朝から体を洗ってるんだい? あっ……」
少し、困った顔をした奥さんがミランの耳元に顔を近づけて言ってくる。
「お嬢ちゃん、オネショかい?」
「いえいえ、そうじゃなく、むしろ、そっちの方が気楽だったんですが……」
苦笑するミランが掻い摘んで説明すると奥さんは、遠慮なく笑い出す。
笑い過ぎて涙を拭う奥さんはミランの肩を叩きながら言ってくる。
「家の坊主もさすがにそこまでヤンチャじゃなかったよ。リホウが付いて来てくれて本当に良かったねぇ」
笑うしかできないミランは、リホウの体毛を洗いながら相槌を打つ。
すると、ふと気付いたような顔をする奥さんがティカに話しかける。
「お嬢ちゃん、あの服以外に服があるのかい?」
そう言う奥さんの言葉を聞いたミランも、あっ、と声を上げる。確か、ティカには私物が一切、木箱以外なかったはずであった。
奥さんの言葉に首を横に振るティカは、「ないのだ」とあっさりと答える。
「もしかしたら、コレットちゃんのお古があるかもしれないけど、家にその白いワンピースと似たのがあるから持って来て上げるよ」
そう言うとミランの返事を聞かずに、体型から想像できないフットワークの軽さで身を翻して家の方へと走り去った。
奥さんを見送ったミランはティカに話しかける。
「今までどうしてたの? 昨日とか着替えてないのかな?」
「あのワンピースは汚れる事はないのだ。ただ……汚れないけど、濡れるのだ」
中途半端な性能の服だな、とミランが呟くとリホウは少し離れた所で身を揺すって水飛沫を飛ばしていた。
手招きすると戻ってくるリホウを手拭で拭いてやるとリホウとシュンラン専用の櫛で梳いてやる。
それを見ていたティカが大きく口を開けたと思ったら、怒りだした。
「どうして、リホウは櫛でアタチは手櫛なのだっ!」
「そういえば、櫛もないんだったね? コレットに買って来て貰うようにお願いしておくね」
そう言うと身を震わせて、「ゆっくりでいいのだ……」と目を逸らしながら言ってくる。
ティカとそんな話をしていると飛び出した奥さんが戻ってくるとワンピースとかぼちゃパンツをティカに見せる。
「あったよ。さあ、いつまでも裸はレディとして駄目だからねぇ? あはっははは!!」
豪快に笑う奥さんにティカはおとなしくパンツを履かされて、ワンピースも着せられる。
確かに、ティカのワンピースに少し似た感じのものであった。
「すいません。助かりました」
「いいよ。お古で誰も着る予定ないからね」
本当にどうでも良さそうに言う奥さんであったが、後でコレットに報告して感謝の品は何がいいか相談しようと決める。
手慣れた動きでリホウのトリミングを済ませたミランに、感謝を告げるようにリホウはミランの手を一舐めする。
ワンピースを着てスッキリしたらしいティカがミランに抱っこを要求してくる。
おとなしく抱っこするとティカが言ってくる。
「アタチの裸を見たのだ。だから、桃を要求するのだ!」
「あ~はっはは! ミラン、男は辛いねぇ?」
「はぁ、本当に困ったものです。冒険者ギルドに報告に行く時にね?」
やった――! 歓声を上げるティカはどさくさに紛れて財宝で買う予定だった桃を買って貰う約束を取り付ける。
そんなミランを見つめるリホウが話せるなら、主人は甘い、と言ってそうな視線を向けてくる。
ミランは、もう1度、奥さんに礼を言うとティカを抱っこしたまま、リホウと並んで歩いて家へと歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます