第674話関白殿、二月二十一日に(29)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


太陽が明るい陽射しを伴って昇る時間となりました。

御簾の屋根には水葱の花飾りが素晴らしく際立って輝き、奥の帷子の色合いや艶やかさも本当に美しくなるのです。

四方の御簾を従者に張らせて、お出ましになられました。

御簾の帷子が揺れているのを見ていると、

「格別に素晴らしいものを見ると、髪の毛が逆立つ」

などと、人が言うのも、もっともだと思うのです。

このような美しいご様子をみてしまうと、そもそも美髪でない人は、何故中宮様のような美髪に生まれなかったのかと、愚痴をこぼしてしまうかもしれません。

それと、やはり、何が理由で思いがけず、このように立派な中宮様の御側に親しくお仕えすることができたのだろうかと、自分自身が誇らしくもなります。

御簾が私の前を通り過ぎる時、一度榻に下ろしてあった轅を、またすぐに牛にかけ、御簾の後についていく気分も含めて、素晴らしく興趣深いご様子といい、言葉にはできないほどなのです。


※関白殿、二月二十一日に(30)に続く。

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