第675話関白殿、二月二十一日に(30)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


中宮様が積善寺にご到着なされたので、総門の近くで高麗楽や唐土楽が奏でられ、獅子舞や狛犬舞が飛び跳ねたり舞ったり、乱声の音や鼓の音にも、気が昂ぶります。

ここはまさに、生きながらに、仏のおられる御国に来てしまったようで、天にも昇るような気持ちになるのです。

門の中に入ると、色鮮やかな錦の幄に御簾を実に青々と端から端まで下げて、屏幔などを引き巡らせている様子で、全ての事が現世とは全く思われません。

中宮様の御桟敷に私たちの車を近寄せ、再び先程の伊周様と隆家様がお立ちになり、「早く下りなさい」と、おっしゃられます。

乗ってしまったことだけでも恥ずかしいのに、より明るくしっかり見えてしまうことに加えて、髪の毛を手入れしてあったのに唐衣の中で形が少し崩れていて、見慣れないような恰好になっていると思うのです。

髪の色の黒さや赤さまでも、見分けられてしまうほどに明るいので、「下りなさい」と言われても、そのまま下りることが出来ないのです。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :高麗楽や唐土楽については?

清少納言先生:高麗楽は右方、唐土楽は左方を演奏します。どちらも渡来の音楽です。

舞夢    :獅子舞と狛犬舞は、どのように?

清少納言先生:交互に舞ったり、同時に舞うこともありました。


※関白殿、二月二十一日に(31)に続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る