第641話御前にて人々とも(2)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


そのようなことがあって、しばらくした頃、私(清少納言)は本当に思い悩んでしまうような出来事があり、里(私邸)に下がっていたのですが、中宮様からそれは見事な紙を二十枚、御下賜されたのです。

その添えられた御手紙には、

「はやく参上なさい」と書かれており、

「この紙には最前の話をお聞きになっていらしてとのことです。上等な紙ではないので、延命のご利益がある寿命経は書けないでしょうね」

とも書いてあるのは、なかなか面白い表現と思います。

そのような話を確かにしたことがあるけれど、自分ではいつか忘れてしまっていて、それを中宮様の方で覚えておられたことは、それはやはり普通の人であっても心惹かれる話なので、ましてや中宮様のお気持ちを思うと、ただ事ではありません。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :上質な紙を使えば寿命が延びると話した先生の言葉を、中宮様が覚えておられたのですね。

清少納言先生:寿命経は正式には、「仏説一切如来金剛寿命陀羅尼経」。延命祈願の経になるのですが、その御経の名が出て、上質な紙。

舞夢    :そこまで、ご心配されていて、戻っておいでと言われれば、感激しますね。

清少納言先生:それはそれは・・・もう・・・


※御前にて人々とも(3)に続く。

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