第516話野分のまたの日こそ(3)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


その若い女性は、しんみりとした雰囲気で外を見ながら

「むべ山風を」などと口ずさみます。

それを見ると、ものの情趣をよく感じとる人と思うけれど、それでもまだ十七歳から十八歳くらいでしょうか。

身体つきからみて、幼くはないけれど、特に大人とは見えない女性です。

生絹の単衣は、あちこち糸がほつれてほころんでいて、また縹色が褪せて濡れたような薄い色の夜着を着ています。

髪の毛は、艶がありとても美しい上に、手入れもしっかりと整って、髪の裾も薄のように、ふっくらとしていて、ほぼ背の丈と同じくらいの長さ、それが着物の裾に隠れて、袴のひだの間から見えています。

そんな若い女性は、庭に出ている童女や若い女房たちが、風に根本ごと吹き折られたのを、あちこち拾い集めたり、起こし立てたりするのを、うらやましそうに、簾を外に押しやって、身体を簾に押し付けるように見ています。

その後ろ姿もまた、雰囲気があるのです。


清少納言先生:はい、お疲れ様でした。

舞夢    :「むべ山風」の歌は?

清少納言先生:「吹くからに 秋の草木の しほるれば むべ山風を 嵐といふらむ」古今集です。

舞夢    :それにしても風情のある歌、風情のある様子ですね、若い女性を含めて。

清少納言先生:何気ないことかもしれないけれど、そういう所にも、見るべきものがあるのです。

舞夢    :大変参考になります。

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