第440話宰相の中将斉信(9)

源の中将宣方様は、悔しい思いに満ちてしまいながら、それを作り笑いで誤魔化して、あちらこちらを歩き回ります。

斉信様が近衛の陣の座につかれていたところを発見して、脇に呼び出して

宣方様

「清少納言にいろいろと、やりこめられてしまったのです。そうなると、やはり、そこの三十の期の詠じ方を教えていただきたいのですよ」

と、お願いしたので、斉信様はお笑いとなり、教えてあげたのです。

私としては、そのような経緯も理解していなかったのですが、源の中将は私の局の近くまで来て、本当に上手に斉信様の真似をして吟ぜられるので、不思議に思って

「そのお声はどちらさまですか」と、尋ねたのです。


※陣:近衛の諸吏の詰め所。


宰相の中将斉信(10)に続く。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る