第431話故殿の御服の頃(5)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


殿上人は毎日中宮様の前に参上され、夜を通して朝まで話し込んでいるのを聞いておりますと、

「秋だけのことなのでしょうか、太政官のための場所が、夜遊びの場所になっているようで」などと吟じていたのは、この時期ゆえであり、この場所であることを上手に詠み込んでいると思い、素直に感心しました。

秋にはなっているのですが、昔の人が「片方涼しき風や吹くらむ」と詠んだ通りには涼しい風が吹かないのは、この建物の場所柄なのだと思いました。

それでも、秋を告げる虫の声は、やはり聞こえておりました。

中宮様が宮中にお戻りになったのは八日でしたので、七日の宵の七夕祭りをこの場所で見て、いつもより近くに感じたのは、ここが狭いからなのだと思いました。


清少納言先生:はい、お疲れ様でした。

舞夢    :珍しく他の場所で過ごすと、いつもの見慣れたお祭りでも、新鮮に感じるのですね。

清少納言先生:そうですね、気分転換の効果もあります。

舞夢    :方違えも不便な面があると同時に、そういう気分転換とか普段見ていなかったものを発見して楽しむということもあるのですね。

清少納言先生:はい、その通り、そこまでわかっていただければ。


やはり、定例の生活を繰り返すだけでは、どうしても感覚も鈍る。

たまに、別の場所で過ごすことは、人々の感覚を活性化させる効果がある。

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