第364話円融院の御果ての年(2)
清少納言先生:続きをお願いします。
舞夢 :了解しました。
さて、翌朝早く、手を洗って蔀から「さあ、そこの昨日の巻数を」と、取ってもらい、伏し拝み開いてみると、胡桃の色のように染めた厚手の色紙でした。
これはどういうものなのかと思って、少しずつ開いていくと、まさに法師のような筆跡で
これをだに かたみにと思ふ 都には 葉がへやしつる 椎柴の袖
(この椎柴の喪服ぐらいは身にまとい、故円融院を偲ぶために衣替えをしないでいるのに、都人は既に忌みが明けたとあっさりといつものお衣装なのですね)
と書いてありました。
本当に予想もしていなかった、嫌味な歌です。
出し主はだれでしょうか。仁和寺の僧正の筆跡かと思ったけれど、僧正はこんなことをするお人柄ではない。
藤大納言は、円融院の御所の別当をつとめていらしたので、おそらくあの方だろうと思う。
清少納言先生:はい、そこまで。
舞夢 :巻数とは?
清少納言先生:読経を依頼された僧侶が、読経の巻数や陀羅尼を唱えた回数を願主に報告するための書付、つまり昨日届いた立文です。
舞夢 :椎柴の袖というのは喪服の意味なのですか。
清少納言先生:椎は常緑樹で葉が落ちません。それと椎の実で染料を取って喪服を染めるので、喪服の袖を椎柴の袖と表現していました。
円融院の御果ての年(3)に続く。
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