第363話円融院の御果ての年(1)

清少納言先生:今日から円融院の御果ての年、つまり諒闇が明けた年のお話になります。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


円融院の諒闇が明けた年に、宮中をはじめとして、故院につかえていた人も、皆が喪服を脱ぎ、かつての仁明天皇国忌の時に、僧遍昭が「花の衣に」と詠んだことなどを、しみじみと思い出話をしておりました。

雨が激しく降る日ではありましたが、藤三位の局のところに、簑を着て、まるで大きな蓑虫と見間違えるような大きな身体をした童が、立文を白く削った木に挟んで

「これをお届け申します」と言ってくるので、取次をした女房が

「どなたからでしょうか。今日明日は物忌みですので、蔀をあげることもいたしません」と言って、下の方は閉めたままの蔀から取り入れます。

藤三位は事情をお聞きになったけれど、「物忌みなので読みません」と言って、見ようともしないので、取次の女房はそれを蔀の上に突きさしておきました。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :まず、円融院様は、一条帝のお父上ですね。

清少納言先生:はい、正暦二年(※991)の二月十二日に崩御されました。

舞夢    :「花の衣」の歌とは?

清少納言先生:古今集の「皆人は 花の衣に なりぬなり 苔の袂よ 乾きだにせよ」からです。この歌を詠んだ遍昭が在俗時に蔵人頭として仕えていた仁明帝が崩御され、そのまま出家して詠んだ歌です。

舞夢    :藤三位は、一条帝の乳母ですね。

清少納言先生:はい、その通り、藤原師輔の娘です。


円融院の御果ての年(2)に続く。

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