第362話五月ばかり、月もなういと暗きに(3)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


頭の弁の行成様が私(清少納言)と、そういう真面目な話をして座られていると

「栽えてこの君と名付けましょう」と吟じながら、先程に殿上の間に戻った一行が、またこちらに集まってきました。

頭の弁の行成様が

「殿上の間で、決めたことを果たさないで、どうして戻ってしまったのですか、全く理由がわかりません」

とおっしゃると

殿上人は

「清少納言様のあれほどの機転のきいた言葉に対して、何をどうして答えていいのやら、返事が出来ないのです」

「下手なお返事では、かえって面白くありません」

「殿上の間に戻ったところ、この話でもりあがったことは、すごいのです」

「何しろ帝もお聞きになって、興味を持たれておりました」

と、おっしゃられます。

とうとう、頭の弁の行成様も一緒になって、同じことを何度も吟じなされました。

それには興味も出てくるので、結局女房たちも、それぞれに殿上人と夜を明かして話し込み、帰る時も当然のように同じ詩句を吟じて歩くので、その声は一行が左衛門の陣に入ってしまうまで、聞こえておりました。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :先生の一言が、大騒動ですね。

清少納言先生:まさか、こんなことになるとは。

舞夢    :殿上人たちも、必死になって考えたのですね。



五月ばかり、月もなういと暗きに(4)に続く。

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