第361話五月ばかり、月もなういと暗きに(2)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


頭の弁行成様は、殿上人たちにはついて行かず、お残りになっています。

行成様は

「あの人たちは、返事もしないで殿上の間にいってしまったけれど、何故そんな風にするのだろうか」

「清涼殿の御前の竹を折って、歌を詠もうと思っていたのです」

「どうせなら、職の御曹司に参上して、女房たちを呼び出してその席で、と思って竹を持ってきたのです」

「呉竹の名前を清少納言様に先に言われてしまって、即降参して逃げ出してしまうとは、本当に情けないことです」

「しかし、呉竹の話などは、知らない人が多いのに、誰に教わったのですか」

と、聞いてくるので

私は少しとぼけて

「竹の名前ともよくわからないのに、無礼なことを思われたのでしょうか」

と答えます。

行成様も、私の心を察して

「あなたがそういうのであれば、そういうことにしておきましょう」

と、おっしゃられました。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :知っていても、知らないふりですね。

清少納言先生:だいたい、漢詩とか唐の国の書物に関することは、本来男がするもの、女の私は学者であった父の影響で知っているけれど、あまり表沙汰にはしません。

舞夢    :行成様も、その事情を察しているわけですね。


五月ばかり、月もなういと暗きに(3)に続く。

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