第356話頭の弁の、職に参り給ひて(3)

清少納言先生:続きをお願いしました。

舞夢    :了解しました。


私(清少納言)が


夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも 夜に逢坂の 関はゆるさじ

(夜明け前に函谷関の番人を鶏の鳴き声で騙したとしても、逢坂の関の番人は男女の逢引などは許さないでしょうから、通れません)

と、歌で返すと


行成様は


逢坂は 人越えやすき 関なれば 鳥鳴かぬにも あげて待つとか

(逢坂は人が越えやすい関ではないですか 鶏が鳴かなくても関の戸を開けて、人が来るのを待つと聞いていますよ)

と返してきたのです。


さて、最初の手紙は、中宮様の弟の隆円僧都の君が、本当に丁寧に床に額までつけて持っていってしまった。

後の二通は、中宮様に差し上げた。

ただし、私にとっては、逢坂の関の歌に対して、どうして返したらいいのか浮かばず、ご返歌ができなかったことのほうが、本当によくないことだった。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :そうですか、先生にとっては文字より、返歌が気になるのですか。

清少納言先生:人によっては、行成様との関係を見せつけるために、手紙を他人に渡してしまったと言うんだけど、とんでもない。

舞夢    :それは、先生の個性を無視していますね。

清少納言先生:確かに美しい文字は認めるけれど、まずはそれを書く人の感性が大切だと思うの。


清少納言先生は、少し立腹気味です。 

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