第355話頭の弁の、職に参り給ひて(2)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


私(清少納言)は、その返事として

「それは大変なことですね、夜遅くに鳴いたと言われる鶏の声は、孟嘗君のお供が真似をした鶏の鳴き声かもしれませんね」

と、申し上げると

行成様は、さっそく折り返しの手紙をよこしまして

行成様

「そもそも、孟嘗君の鶏というものは、函谷関を開くことで、三千人もの食客がようやく通り抜けたという話ではないですか」

「私の言いたかったことは、それではなく逢坂の関、ですからあなたにお逢いした夜のことです」

と書いてあります。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :さて、ここで孟嘗君の故事とは?

清少納言先生:はい、「史記」の孟嘗君列伝からです。春秋戦国時代、斉の公族の猛暑君が使者として出向いた秦の国において、拘束されそうになって、それを逃れるために、夜が開けないと通れない函谷関で食客の中にいた鶏の鳴き声が上手な人に、それをさせて通りぬけた故事です。

舞夢    :つまり行成様が早く帰ってしまったことへの皮肉なんですか?

清少納言先生:さて、続きでわかります。


頭の弁の、職に参り給ひて(3)に続く。

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