第281話淑景舎、東宮に(9)

北の方も、心配になるのでしょうか

「本当に急いでお返事を」

などと申し上げるので

淑景舎は奥の方を向いてお返事を書いています。

北の方も、お世話をしようと、お近寄りになってお手伝いまでしようとなさるので、淑景舎は、ますます困ってしまう様子です。

中宮様が、萌黄の織物の小袿と袴を禄としてお渡しになられたので、三位の中将はお使いの周頼の肩に掛けられて上げられます。

ただ、首の周りが窮屈らしく、縁を手で持ちながら、周頼は立ち上がりました。

松君は、大人が思わず耳を傾けそうな可愛らしいことをおっしゃいます。

それを聞くと、大人たちは全員可愛らしく感じています。

関白殿

「中宮様のお子様と言って、人前に出しても、これでは問題にならなそうです」

などとおっしゃられるものだから

私も、本当に、どうして中宮様にお子様がおできにならなかったのか、いつおできになるのだろうかと、本当に待ち遠しく思う。


淑景舎、東宮に(10)に続く。

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