第278話淑景舎、東宮に(6)

朝のお食事時になりました。

御髪上げの女官が参上し、女蔵人たちが御倍膳の人たちの髪をお上げする時間は、隔てとして置いてあった屏風も、押し開いてしまいました。

それで覗き見をしていた人たちは、隠れ蓑を取られてしまったようで、もう少し見たいなあと思いつつ、辛いのですが御簾と几帳の間に移動して、柱の外から拝見することになりました。

それでも、私の着衣の裾や裳が御簾の外に出てしまっていたので、関白殿に気づかれてしまいました。

関白殿

「あれはどなたですか、あの御簾の間から見えるお方は」

と気に留められたので

中宮様が

「清少納言が何かと興味があるようなので」

とおっしゃられると

関白殿

「いや、それは恥ずかしい、清少納言は昔馴染みなんだ」

「あの人に、こんな可愛げのない娘たちを持ったのだと思われたら、これは大変だ」

などと言いながらも、そのお顔は得意満面に見えるのです。


淑景舎、東宮に(7)に続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る