第276話淑景舎、東宮に(4)

お父上の関白道隆様は、薄紫色の御直衣に萌黄色に織った指貫を御着用になり、紅の袿など襟紐を差し入れて、威を正して廂の間の柱に背中を当てて、こちらを向いてお座りです。

素晴らしい様子を笑顔で、いつもと同じに冗談を言っておられます。

淑景舎は本当に可愛らしく、絵に描いたような御姿で座っておられるのに比べると、中宮様はくつろいでおられて、淑景舎よりは大人びています。

そんな様子が紅の御衣に映り合っていらっしゃるので、これ以上のお方などおられないようにと、思われるのです。

朝の御手水の準備をしてさしあげることになりました。

淑景舎の手水は、宣耀殿と貞観殿を通って童女の二人と下仕えの女が四人で持ってこられるようです。

唐廂より、こちら側には、登花殿寄りの廊には女房が六人ほど並び控えています。

ただ、そこでは狭いということになり、半分の人は淑景舎をお送りしてから返ってしまいました。


淑景舎、東宮に(5)に続く。

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