第272話雨のうちはへ降るころ(4)

さて、信経は、かつて作物所の別当を勤めていた。

その時代に、誰かのところに届けてあったのだと思うけれど、何らかの絵を書いて届ける仕事があり、信経が「この下絵のように仕上げて欲しい」とメモを書いてあった、その字の書きざまが、本当に見たこともないようなド下手な字なのだ。

私(清少納言)が

「この字のように仕上げたら、注文の品とは、全くの別物になるでしょうね」と書いて、殿上の間に持たせてみると、そこにいた人たちが手にとって大笑いとなったことがある。

その時の信経は、本当に腹を立て、私のことを気にらないと思ったようだ。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :作物所は、宮中でお使いになる調度類の調達とか制作する役所ですね。

清少納言先生:はい、信経は、かつてそこの別当つまり長官の職にありました。

舞夢    :少々、イジメ気味ですか?

清少納言先生:だってね、センスもなく、字もド下手なのに、和歌をいくらでも詠めるなんて意地を張るものだから。


なかなか、女房連中特に清少納言先生を敵に回すと、大変なことになる。


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