第271話雨のうちはへ降るころ(3)

すると信経は

「そんな探し方をされた、としては、彼女自身がしっかり考えたことではなくて、時柄という名前から咄嗟に浮かんだのではないでしょうか」

「まあ、こういうことは和歌と同じ、すべてその場の雰囲気とか題材があれば、面白い応答もできるものです」と言い張るのです。

私(清少納言)は、もう少し信経を責めてあげようと思いまして

「まあ、そういう時もございます、それでも、そんな受け答えをしたのでしょうね、それでは今の状況で何か歌を詠んで見てください」と話しかけると、

信経は

「それは、おまかせください」

「中宮様の御前でもありますので、せっかくですから何首でも、詠みましょう」

と、返してきたのですが、中宮様から帝へのお返事が出来たということが伝えられ、

信経は

「本当に怖かった、逃げるが勝ち」と帝のところへ戻っていきます。

そんな姿を他の女房が見て

「あの人ってね、漢字も仮名も下手なの、かなり物笑いになっているので、証拠を残さないようにと、必死ですね」

と、くすくす笑っている。


雨のうちはへ降るころ(4)に続く。

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