第273話淑景舎、東宮に(1)

清少納言先生:今日から「淑景舎、東宮に」の話です。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


中宮様の御妹様で淑景舎(桐壷)の原子様が、東宮(後の三条帝)に入内なされた時は、これほどはないと思われるほど、素晴らしいことばかりでありました。

正月の十日に参上なされたのですが、その折には中宮様との間には、御手紙だけの往来はありますが、ご対面はまだでした。

さて、二月の十日すぎに、中宮様の御前にお出ましになるというご連絡がありましたので、私どもは普段よりまして、部屋の置物などに本当に気を使って手入れをしたり、整えたりのことを行いました。

お出でになられたのは、夜半頃でした。

それで、ほとんど時も経たないうちに、夜も明けてしまいました。

お迎えの準備は、登花殿の東廂の柱間二間にて行いました。

予定としては、夜半前のお出ましのはずでありましたので、淑景舎(桐壷)の原子様にお供をしてきた女房たちは、配膳室に続く渡殿にいるのだと思います。

中宮様のお父上の関白道隆様と母上貴子様は、夜明け前に同じ御車で参上なされました。

朝も早い時分なので、御格子も端まで全て上げてしまいます。

中宮様は、お部屋の南に、四尺の屏風を北向きに立てて、西と東にはお座敷を敷き、御畳の上には敷物だけを置き御火鉢を用意なされました。

御屏風の影の南側や御帳の近くには、たくさんの女房たちが控えています。


淑景舎、東宮に(2)に続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る