第267話御かたがた、君達、上人など

清少納言先生:今日は中宮様のご近親の方々、君達、上人が集まっている時のお話になります。

舞夢    :了解しました。


中宮様のご近親の方々、若君たち、殿上人が、御前にたくさんおられたので、私(清少納言)は、遠慮して、廂の間の柱に寄りかかって、女房たちと雑談をしておりました。

すると、中宮様が何か書いたものを、私にお渡しになられます。

それを開いてみると

中宮様

「あなたに心を寄せてもよいものでしょうか、どうなのでしょうか」

「人間というものは、一番に愛されないと、どうなってしまうのでしょうか」

と書いてあるのです。

そう言えば、昔、中宮様の御前で、雑談をしている際に、

私が

「どんなことにつけても、人から一番に愛されないとするならば、おつきあいをする張り合いがないと思います」

「それでなかったら、めちゃくちゃに憎まれ悪意を持たれているほうがましです」

「二番目、三番目などは、もっての他、愛されるとするならば一番に限ります」

と言って、同じように御前に座っていた女房たちから

「それは一乗の法ですね」と笑われた、その話を思い出したのでしょうか。


中宮様から、筆と紙も賜ったので

私は

「九品蓮台の間に生まれ変わるとするならば、下品であっても、嬉しいことになります」と書いて差し上げると

中宮様は

「あなたらしくもない、それは考えすぎです、本当に困りますねえ、一度言ったからには、その思いを保っていればいいのに」

とおっしゃられます。

私は

「それは、そのお相手しだいということもありまして」

と申し上げると

中宮様

「それはおかしいと思いますよ、一番素晴らしいと思っている人から、いちばん大切に愛されたいと思うほうがいいと思いますよ」

と、おっしゃられた。

その会話に、本当にうれしさを感じました。


清少納言先生:はい、お疲れ様。

舞夢    :遠慮をして、遠くに座っていたら、問答になったのですね。

清少納言先生:まあ、お偉い方々ばかりですからねえ。

舞夢    :中宮様は、先生とお話をしたくて仕方がなかったのでは。

清少納言先生:それはありがたいけれど、なかなか一介の女房ではね。


確かに遠慮するのも、仕方がないことだと思う。

中宮様も退屈していた、だから心が通じ合っている清少納言先生と話をしたくて仕方がなかった。

少し困らせるような問答も、親しさのあらわれなのだと思う。


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