第268話中納言まいり給いて

清少納言先生:今日は中納言様が出雲に行く前のお話です。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


中納言隆家は御扇を中宮様に献上なさるのですが、その折に

「私は、他人では手に入れることが出来ないような、とても素晴らしい扇の骨を手に入れたのですけれど、普通の紙では、その骨に不釣合いになりまして、張る気にはなりません、それで紙を探しています」

と申し上げるのです。


中宮様は

「どれほどの骨なの?」

とお聞きになるのですが

中納言様は

「とにかく素晴らしい、誰も見たことのないような骨のこしらえ方です」

「そういう評判です、私もはじめてこれほど素晴らしいのは初めてみました」

とおっしゃるので


私(清少納言)は

「そうなりますと、扇の骨ではなくて、クラゲの骨のようですね」

と申し上げると


中納言様が

「ああ、これは言い得て妙です、私が言ったことにしてしまおう」

と言って笑っておられます。


まあ、このような話は、黙って聞き過ごせない種類の話になる。

「一つでも書き落とさないように」と人々が言うので、書き留めておきます。



清少納言先生:お疲れ様でした。

舞夢    :この話は道隆様がお亡くなりになって、中宮様の弟の隆家様が一七、八歳で出雲に出向く少し前の話ですね。

清少納言先生:都下りになるので、辛い話になるけれど、それでも明るい雰囲気でした。中納言様も、やがては都に戻されました。

舞夢    :扇の骨の話ですが。

清少納言先生:骨としては、黒柿か檜を薄く削ったものも使いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る