第252話五月の御精進のほど(8)

使いに出した者が

「公信の侍従様は、『すぐに参ります、しばしのお待ちを願います』とおっしゃっています」

「侍所に普段着でおられたのですけれど、大急ぎで指貫をお召しになっておられます」との、報告をしてきました。

私(清少納言)は

「待つというほどの大切な用事ではないので」と車を急がせます。

土御門殿の近くになると、侍従様はいつの間に身なりを整えたのでしょうか、帯はそれでも道々結びながらのようです。

侍従様は

「しばしお待ちを、しばしお待ちを」と追いかけて来られますし、その後から三、四人ほど裸足で駆けてくるようです。

私(清少納言)は

「急ぎましょう、速く」と、さらに急がせたのですが、土御門殿に着いた時に、息を弾ませた侍従様に追いつかれてしまいました。


五月の御精進のほど(9)に続く。

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