第209話職の御曹司におはしますころ(11)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


さて、例の雪の山は越の白山そのものかと思われるほど、溶け消える様子がない。

汚れてきて見るほどもない姿にはなったきたけれど、私としては本当に賭けに勝ったような気がしてきた。

となると、どうしても十五日まで持たせたくなり、祈ることもする。

ところが「七日までは持たない」と今でも人は言っているので、どうしても決着を見たいと全員が思っていた。

しかし、全員の思惑とは別に、中宮様が急に三日に内裏に入御なされることになった。

この雪山の最後まで見届けないで終わってしまうことが本当に残念などと全員が思っている。

同じことを中宮様もおしゃられたので、私としても、同じ思いを持たれておられるのなら、私の予言通りになったところをご覧になっていただきたかったのに、これでは仕方がない。

内裏へご帰参なされるために御道具類を運び出し騒々しくなっている時の合間に、築地のほとりに小屋を作って住んでいる木守を縁先まで呼んで

「この雪山を厳重に守ってください、童たちが踏み荒らしたりしないように、崩さないように十分に神経を使って、十五日までは番をしてください。十五日まで雪山が残ったならば素晴らしいご褒美がいただけるはず、私からも本当に御礼を言います」と言い、そのうえいつも台盤所の人や使用人たちに与えるお下がりの果物とか様々なものをたくさん与えます。


職の御曹司におはしますころ(12)に続く。

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