第208話職の御曹司におはしますころ(10)
清少納言先生:続きをお願いします。
舞夢 :了解しました。
中宮様はまだお寝みになっておられましたので、とにかく早くお知らせ申し上げる必要があるということで、御帳の近くの御格子を上げるために、碁盤を引き寄せて、その上に乗り、音を立てないように息を立てずに押し上げるのですが、とにかくかなり重い。
片方だけをあげると、ギシギシと音を立ててしまいました。
結局、中宮様は目を覚まして
「どうして一人で上げているのですか」とおっしゃられるので
私(清少納言)は
「斎院様から御手紙が参りました。急いで上げないわけにはいきません」と申し上げました。
中宮様
「そうなのですか、それで本当に急いで上げてくれたのですね」
と身体を起こされました。
斎院様からの御手紙をお開きになりご覧になられると、五寸ほどの卯槌二つを、卯杖のように頭の部分を包み、山橘、日陰のかずら、山菅等で可愛らしく飾り、御手紙そのものは添えられていません。
しかし、そんなことはないと思い、注意深くご覧になると、卯杖のように頭を包んだ小さな紙に
山とよむ
斧の響きを
尋ねれば
いはひの杖の
音にぞありける
(山に響く斧の大きな音を尋ねて行くと、卯の日の祝の杖を切る音でした)
と書いてあります。
その御礼の返事を書かれている中宮様のお姿も本当に素晴らしいのです。
斎院様には、こちらから御手紙を差し上げる時も、お返事を差し上げる時も、特別緊張して、書き損じも多くなります。
そういうところに、中宮様の斎院様に対する思いがよくわかるのです。
斎院からのお使いに、白い織物の単衣と蘇芳の梅襲を与えたようです。
雪が降りしきる中、頂戴物をかついで斎院に戻る姿も絵になります、
その時の御返し歌を聞かなかったことが、今となっては大変残念です。
清少納言先生:はい、そこまで。
舞夢 :それはそれは、大変でした。
清少納言先生:西院様と中宮様です、緊張します。
舞夢 :それでも、素晴らしい関係なのですね。
清少納言先生:そうですね、その場面に立ち会えたことが、幸せです。
職の御曹司におはしますころ(11)に続く。
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