第202話職の御曹司におはしますころ(4)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


その後は、その奇妙な尼としては顔見知りになったと思ってしまったのだろうか、頻繁に姿をみせては、これみよがしにうろついている。

そして、すぐに「常陸介」とあだ名をつけられてしまった。

中宮様から御下賜の白い着物に着替えることもなく、前と同じうす汚れた身なりをしている。

私たち女房としては、せっかく中宮様から御下賜の衣をどうしたのだろうかと、皆呆れている。

右近の内侍が中宮様のところへ参上してきたので、

中宮様は

「こんな風体の者と語り合い呼びつけてしまったようです、門衛も騙されるのか、いつも来ているのです」とおっしゃって、あの時の尼の振る舞いを小兵衛に真似をさせるのです。

右近の内侍は

「そういうことなら、その尼をなんとかしてしまいましょう、ぜひ見せていただきたいのです、それでも皆様の人気者のようですね、まあ決して騙し取りはしませんけれど」そんなことを言い、笑っている。

その後、別の尼が現れたので、その新しい尼に常陸介のことを尋ねてみました。

すると、その新しい尼は事情を知っていて本当に恥ずかしく思っているらしく、説明も出来ないようだ。

私たちも、その姿を見て可哀想になってしまい、以前と同じように中宮様は衣一枚御下賜なされた。

新しい尼は、腰をかがめて頂戴するけれど、拝舞などは身の程にあわないらしく行わない。

私たちも、そんなことは求めないので、問題とはしない。

新しい尼は、本当に嬉し泣きをしながら返っていったけれど、常陸介が偶然なのか、その姿を見てしまったらしい。

その後は、長い間常陸介の姿を見ることもなかった。

また誰一人思い出すこともなかった。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :何か常陸介と新しい尼は関係があるのでしょうね。

清少納言先生:うーん・・・何か弱みがあるのかな、常陸介のほうに。

舞夢    :宮中でもいろいろなことがあるんですね。

清少納言先生:白拍子とか芸人が入ってくるけれどね。

舞夢    :警備とかよく騙せますね。

清少納言先生:おおらかと言えばそうなんだけど。


古き宮中の暮らしの一コマになるけれど、常陸介や別の尼が実際どんな人生を送ったのか、感慨深いものがある。


職の御曹司におはしますころ(5)に続く。

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